「Silent(第6話)」人を恋することで、こんなに刹那くなることへの再認識をマイノリティが教えてくれる
先にも、書いていたが、夏帆演じる奈々と紬が対峙するシーンがあるだろうなと思っていた。そして、それは想像以上に重厚な刹那さに溢れていた。まだ、耳の聞こえない想に対して誰も愛を告白しているわけではないから尚更だ。
誰もが今回の夏帆の演技に釘付けになっただろう。彼女の想への想いだけで1回を費やすとは、すごい脚本だ。そして、そこに聾者と健常者の壁、そして、健常者としての想のことを知らない自分が悲しくなる感じ。そう、こういうマイノリティの人しか感じないものをここまで丁寧に書こうとしているだけで何かすごい空間を見せられた気がした。これをドラマとして有機的に完成させたのは夏帆の演技だ。彼女はリアルではもう31歳。でも、ここではそれよりも数歳若い役である。そして、その年齢の愛らしい彼女の演技が視聴者の涙腺に作用してくる。
自分が聾者という現実はどうしようもない。自分だけのものだった想が、昔の恋人とよりを戻しそうなところで、自分から彼女に会いに行くということはドラマを昂らせる。そして、自分が想に教えた手話を、彼が紬に教えたという話を確認し、「自分があげたプレゼントを使いまわされた感じ」という。なかなか刺さるセリフだ。もちろん、この言葉は健常者同士の間でもよく思い当たるところはある。だが、聾者同士の手話という特異な行動を健常者が使っていることへの嫉妬というか、「そこに入ってこないで」という叫びはすごいわかるわけで、刹那すぎる。
今回は、奈々と想の出会いのシーンから始まる。想が大学にいた時には、まだ少し聞こえていたということもわかる。そして、彼は声を出している。紬に対し、奈々は「想はどんな声をしている?」と聞くが、それは彼女の抱えるこの世界への閉塞感を示すものであり、少しでもその世界を知っている想は大きな希望だったのだろう。だからこそ、今回のラストの2人の姿は見ていて辛いし、脚本家はこの後、どこに視聴者を導こうとしているのか?・・・確かに恋愛など、わからぬ心の勢いの中で行われるもので、着地点などわからない。そして、ドラマの中にそういうアンバランスさを見事に作り上げていることに、とにかく魅了されていく私がいるわけだ。
毎回、とにかくドラマの中の人間の心象風景に没入させられる。だが、主役の紬と想の心の奥底に踏み込んでいくのはこれからだろう。なんか、折り返し点でもあろうこの辺りで、ラストシーンを見るのが怖くなるような感じもある。私的には、皆が幸せな未来を見つめてるようなラストであってほしいと思ったりする。まずは、また来週、じっくり拝見させていただきます。