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「おかえりモネ」心のわだかまりを解消する話だったのですね。気象予報も心象予想も難しいということ?

 NHKの朝の連続テレビ小説「おかえりモネ」が終わった。今回もとりあえず完走ができたが、ここに感想を書くことに筆が進まなかった。つまらなかったわけではない、全て見て振り返れば、お話としてドラマの脚本としてまとまりはあり、そういう意味ではこれを傑作と評する人も多いだろうと思う。そして、全体のいまいち暗いトーンを考えると、朝から見るには辛い感じのシーンも多く、こういう話を朝に毎日見させるのはどんなものか?と思われた方も多いのではないか?

つまり、今までの朝ドラとはちょっと毛色の違うものだったと思う。女性の一代記や、成功話ではなく、あくまでも、震災で心を痛めた少女の現実への生きる希望を明確にするまでの復活譜だったからである。そして、故郷に帰ってきたところで「おかえりモネ」だったわけだが、今日の最終回ではセリフとしてそれを念を押す。そして、ラストは2年半あっていなかった坂口健太郎との抱擁で終わるが、この二人の遠距離恋愛もまた今風なものなのかもしれない。確かに震災以降、日本全体もいろんな意味で人の心の伝え方が変化しているということはあるし、それが心の問題であり、それは気象予報に似ているところがある。だから、「お天気やさん」などという言葉もあるわけだ。

とにかく、このドラマ清原果耶が主演ということが私には楽しみだった。これで朝ドラの出演は3回目。その間に、着実に実力をつけ、今や日本の映画ドラマにはなくてはならない存在になった彼女がどんなヒロインを演じるか?ということは実に興味深かった。

そして、彼女の演技を求めるような脚本は、ある意味ダークトーンのものだった。これはわかるし、それを難なく演じられるのは彼女だけだろうとも思えた。そう、この話、震災の痛みを引きずる演技ができないと成立しない。彼女はその求められるものをしっかりと演じていた。今公開中の「護られなかった者たちへ」でも被災者を演じていたが、この朝ドラを演じることで彼女にとっても震災は大きく人生の中で振り返る出来事になっているはずだ。そう、そういうドラマにシンクロできる女優が清原果耶なのだ。

朝ドラで震災を描いたのは「あまちゃん」以来、2回目。前作は、震災をもろに受ける話だった。そして、ここでも主演の能年玲奈は地震を現地では体感していない。そして、地震が彼女を第二の故郷に帰したことは確かだ。そこでもまた、ラストは未来に向けてのエールだった。そういう意味では似ている風景をしっかり描いたとも言える。

今度は、地震を体感した主人公が、家族の元にいなかったことを悔いる話だ。そして、ぼーっとしてる中で、気象予報士という仕事に出会う。そこを坂口健太郎がアシストしたことで二人の仲が近づいていくというのは古典的な話なのだが、二人の離れていても繋がっている関係は近年の恋愛の形に見える。あくまでも、主人公の百音が、自分をどう生きていくかというテーマの中で、坂口はアシストに徹しているのは新しいと感じた。

作品的には、百音がさまざまな人と対峙して沈黙になるような場面が印象に残る。内野聖陽と浅野忠信が対峙するシーンも印象的だった。そう、人と人が真剣に向き合っているシーンが重くはあるがとてもドラマを動かしていた作品だったと思う。そんな重い雰囲気を少しづつ振り払いながら、時が彼らをまた大きくするようなドラマだったのだ。だから、最後に永瀬康の船が出港するところはまさに再出発のフラグなのであろう。

書き忘れたが、妹役の蒔田彩珠もすごい印象的に映った。彼女自身のこれからのブレイクも期待したい。

色々と書いたが、私的にはそれなりに印象的な朝ドラだったと言える。日本は災害の国である。だから気象予報士の仕事ももっと災害にそして人の暮らしに寄り添うことが必要だということも理解できた。これからも多くの人がここの登場人物のような心に陥ることがあるだろう。そういう時に見返すドラマにはなっていたと思う。

スタッフ、キャストの皆様、お疲れ様でした。


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