「さらば、佳き日(第3話)」自分を愛せないから、愛されることもできない苦悩
時が現在と過去を行き来しながら語られてきた前回まで。そこで、主要な4人のキャラや心のありかはなんとなくわかる感じに描けていたが、3回目は2019年、高校生の山下美月が兄の鈴木仁から離れてひとり暮らしを始めるまでの話。
つまり、山下と鈴木は心の奥底で「好き」という感情を持っている。それが普通の恋愛とは周波数が違う感じに見事に描かれてるのがこのドラマ。それは、かなり優れてると思う。そう、その「感じあう波動」以外にこのドラマで描くようなものは見当たらない。純粋な恋愛ドラマであり、純粋に正攻法でない恋物語である。マイノリティがわかるように認識される現代であるから、そこにある違和感はかなりリアリティを持って描かれる。そのことで、ドラマ自体を重くしているのはある・・。
そんな中心にいる妹役の山下美月。このドラマ、彼女のファンからしたらかなりたまらないドラマではないか?他人に言えない恋に悩む心象風景を彼女がうまく芝居として表現している。その佇まいのそれなりの重さが、少し暗く感じる方もいるかもしれないが、私的にはかなり塩梅の良い演技に見える。彼女、まだまだ高校生役に違和感がない23歳である。女優として伸び盛りの部分もあるだろうが、最近は常に成長が見られる。ここ数年でどこまで化けるかは楽しみなところ。このドラマ、後々、彼女としての転機的に語られる可能性もある。鈴木が「好き」と感じる、微妙な色香を感じさせるところが刹那さにつながるのだ。
そして、同級生で友人の加藤小夏と会話するシーンもいい。加藤を嫌な噂話から解放してあげる場面が出てくるが、この場面、山下も加藤もとても良かった。彼女たち二人のかけがえのない友人関係みたいな空気感が二人の間に生まれる感じが出ていることが素敵である。そして、前にも書いたが、加藤小夏、この世代の女優にはいないタイプの雰囲気を持っている。私的には、このドラマでビビッときた感じがある。映画主演で使ってみたい女優さんだ。
今回は、山下が鈴木から離れようとする刹那さを、家事を教えることで見せていった感じである。この時点で、鈴木はまだ山下を抱きしめようとはしていない。自分の気持ちをうまく表現できないでいる感じが、視聴者をもモヤモヤさせる流れは、脚本と演出でうまく作ってあると思う。
ラスト、山下の新居にやってきたのは、誰かと思ったら、同級生の野球部。ここにも、恋の光が彷徨っているのか?
青春劇のもどかしさは、自分で自分ことを好きと認識しないままに、恋をしてしまうことに起因すると思う。愛するより、愛されたいところに重きを置いてしまうことも、その波動が乱れるところだ。そんな自分の昔のことも思い出しながら、哲学的なことを思考しながら見ていくドラマなのだろう。そこにある空気感は美しい。
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