「Silent」マイノリティの人への愛情をどう表現していくのか?丁寧な脚本に期待大!
昨今は、こういうマイノリティの人たちが主人公のドラマが世界中に多くなってきている。エンタメでそれを描くことが、ひとつの健常者の寄り添いと考える人も多いかもしれないが、実際は、マイノリティもそうでない人もフラットで生活できるようになるための第一歩なのだろうと思う。そう、まだまだ世の中は、障害者には優しくも偏見の目が注がれることは多いと思う。だが、それが親族や、知人に及ぶとまずは、そこにどうしたらいいか考えるように、ドラマの捉えどころで、大きなバリアフリーが生まれるようなことになれば、それはいいことだと思う。そして、その障害者役をジャニーズが演じてるなら尚更だ。
脚本は、ヤングシナリオ大賞、城戸賞準入賞の新人、生方美久。新人らしく、初回はとても丁寧に人物を紹介している。そして、メインになる川口春奈と目黒蓮の再会のシーンをクライマックスに持ってきて、華麗な幕開けをさせていると言っていい。演出もそんな脚本の丁寧さにつられるようにじっくり紡いでいるのには好感が持てた。ワンクールの連続ドラマをどう作り込んでいくかとても楽しみである。
話は川口春奈と目黒蓮の高校の時の恋愛風景から始まり、今は鈴鹿央士と結婚まじかという風景を見せる。そんな中で、川口が目黒を街で目にする。こういうドラマは実際にも良くあることであると、最近私は思っている。不思議に必要な時に必要な人が寄り添ってくる前触れみたいな出会いは、現実でも確実に起こる・・・。
そして、川口と目黒の間にある音楽の思い出みたいなものがすごく重要に扱われている。だから、川口がアルバイトするのもタワーレコードだ。今更、CDショップを舞台にする話というのは、ある意味古臭く見える。途中でCDを視聴する高校生のカップルが出てくるが、昔はこんな風景よく見たなという感じ。大体、私自身が最近CDショップに行かないので、今がどんな風景かわかっていない。ただ、ドラマとしては、「音」というものを大切に扱いたいのだろう。そういう意味合いを感じさせる設定としてはアリだ。
そして、目黒が今、耳が聞こえず、手話で話す生活になってるということは、初回の半分くらいのところで開示される。そして、一緒に手話で話す夏帆も、実に印象的に登場する。
そんな中、最初に彼が耳が聞こえないことを知るのは鈴鹿。それも、目黒の妹の勘違いから・・・。そして、悩みながら酒場にいると、手話の先生である、風間俊介に出会う。ここの出会いを先に出すところはなかなか良い。この店に、この前まで自衛官の筋肉男やってた久保田 悠来がいて、風間と優しく手話してるのは、洒落た感じに見えた。川口春奈の親友役に最近よく顔を出す、藤間爽子。弟には板垣李光人。ドラマの中で芝居のできる人は、着実に出演機会を多くつかんでいきますね。
そんな、前提があって、ラストの川口と目黒の再会のシーンになる。ここで、川口は、目黒の耳が聞こえないのがわからない。だからこそ、残酷な再会シーン。そして、とても刹那い。その後ろから、目黒と待ち合わせていたであろう夏帆が現れる感じもドラマの波乱の予感を見せる。こういう紋切型の見せ所をしっかり描いている脚本は、なかなかお見事!
そして、この再会のシーンでもある駅が、「世田谷代田」。小田急線の駅がこういうドラマで使われることも最近は珍しい。私は、子供の頃、この隣駅「梅ヶ丘」に住んでいた。「梅ヶ丘」は羽根木公園があることもあり、よく映画やテレビのロケがよくおこなれていたが、「世田谷代田」がこういう場面に出てくるのは珍しい。まあ、ひとつ前が「下北沢」であり、そっちに目がいくこともあるのでしょうね。しかし、ホームが地下に潜って、随分と洒落た駅前になったこと。久々に訪ねてみようかなと思ってしまいました。
まあ、そんなこともあり、色々と気になるドラマです。川口春奈は、高校生の演技はいつもより随分やわらかいなと思えたが、やはり、現実の自分に戻ると少し硬めの表情になる。この人は、この硬い表情がすごく勿体無い感じに私には映る。それが、芝居自体を硬くしている感じがするのだ。それに対し、目黒蓮は、高校生の爽やかな感じと、現在の障害者である雰囲気の落差を見事に身体で表現していて、ジャニーズの底力みたいなものなのか?感心させられた。彼の出演は次回からが本番だろう。この二人がどう心を重ねていくのか、すごく楽しみな作品である。