「366日(第11話)」恋愛ドラマというより、遅くなった青春ドラマ的なものを作りたかったのか?
結果的には、遠距離恋愛になるものの、眞栄田郷敦と広瀬アリスは結ばれるというラスト。ハッピーエンドなのだろうが、もう一つすっきりしない感じはあった。確かに、眞栄田の記憶は戻り、広瀬のクラリネットもコンサートを開けるまでになるが、二人のその一年間はなんだったかというと、わかりにくい部分が多い。ドラマとして考えれば、眞栄田の記憶がなくなったことが、二人の愛情を強くしたかといえば、そうは見えてもこない。脚本家が彼らをどういう二人にしたかったのかがよくわからないというところ。
で、前回、看護師であり、前田に対し恋心をもつ夏子が、眞栄田の記憶が戻っていることを見破るが、そこをセリフで解決させてしまった感じがどうも、いまだに納得いかない。
このドラマ、広瀬アリスが主役として描かれているように見えるが、実際の主役は眞栄田なのではないかと思ったりもする。そう、初回で眞栄田が広瀬に高校時代の恋心を開示するところから、眞栄田の一人称ドラマとして描いていけば、結構、面白いものができたのではないか?この時間の後で放送されている「アンメット」は。記憶を失くした杉咲花が日記を書くことで、自分に内在する心を見せていく感じなので、完全な一人称ではないが、それに近い感じなものになり、それがサスペンス感を持たせているとも思うのだ。
ここでも、眞栄田が記憶をなくすのはいいが、目を覚ましたところから、眞栄田の脳内に入るような演出が欲しかった。彼自身が、記憶のない中から、友情や恋愛というものを見直す感じを捉えるような作りにすれば、もっと「眞栄田がんばれ!」的なドラマになり、記憶が戻ってくる感じを演出でどう見せるかも興味深く見られたかもしれない。
そう、結果的には、脚本は高校時代の友情物語が骨子として存在するので、彼らを皆幸せにしてやりたい感じが、細かいところを描かせなかったと言えるのかもしれない。ラストに、長濱ねると坂東龍汰の結婚式で盛り上げるが、彼らはこの物語の中心にいた人物ではないわけだ。そういう二人の晴れやかな姿だけにフォーカスを当てていくのも、本当の主人公の存在を薄くしている。そう、色々バランスが悪い。昨今は、それなりに実力のある脚本家でも、こういうミスを犯すのか?とちょっと残念な気もした。
とはいえ、長濱ねるの花嫁姿は綺麗だったですね。彼女、まだまだ伸び代はあると思う。これから、活躍の場は広がっていくだろう。
で、広瀬を好きだと告白して振られた綱啓永、最後に街で逃げられた高田里穂に再開するシーンは、まだ彼女に縁があるというフラグだろうが、まあ、これは彼を不幸にはしないよという演出ですよね。こういうお節介なシーンがドラマとしては贅肉にも見えるのですよね。
ということで、主役の二人の恋のゴールを素直に拍手できない感じがもどかしい月9であった。
そして、7月からはこの時間枠に、生方美久脚本ドラマを持ってくるらしい。ネットで情報を見る限りは、役者陣が皆、その脚本を誉めている。彼女のストーリー展開能力、言語能力があれば、大きく外すことはないだろう。ファンとしては自然体で見ることにしようと思う。