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「スロウトレイン」現代のお正月ドラマとはこういうのでいいのでしょうね・・。

その昔は、お正月になると食べ過ぎくらいのお正月番組をやっていて、その中には、お正月らしいホームドラマも常にあった。もはや、そういうテレビの世界は作れないのだろうとは思う。だからと言って、Netflixやアマプラでそういうドラマを制作するかといえばそんなこともないだろう。マーケットをグローバルに考えないといけない時代。そう考えれば、日本の正月コンテンツは日本のテレビが作るのが手っ取り早い。

そんなこんなを思う中で、2日にTBSで放送されたのがこのドラマ。脚本は「海に眠るダイヤモンド」がまだ記憶に新しい野木亜紀子。監督は土井裕泰。ということで、期待してみた。

話は幼い時に両親と祖母を交通事故で亡くした三姉弟、松たか子、多部未華子、松坂桃李の今と未来を描きながらお正月がラストになる話。野木さん的には「逃げるは恥だが役にたつ」の雰囲気があるホームドラマ。2時間の中で結構いろんな要素を入れながらも、現代の若者たちの未来を応援するような感じが心地よいドラマに仕上がっていた。

松たか子という女優さんを私はあまり高くは買っていない。もう一つ伸び代が見えてこないからだ。ここでも、何か大豆田とわ子がまた現れたみたいな感じに見えてしまった。ここでも結婚できない(しない)それなりにできるキャリアウーマンなわけだ。そう、できる女にしてはキレを感じない。その分、世の中の女上司的なリアリティはあるのかもしれない。

多部未華子。いつもは、真面目なお姉さん的な役が多いが、ここでは、物事がなかなか続かないで、姉や弟に、「またやらかしてる」と思われているヤンチャさん。多部のこういう役は珍しいが、ちゃんとドラマの中での空気感にはめてきた感じ。これは素晴らしいと思った。最近、どんどん綺麗になっていくというか若くなっていくというか、この女優さんの先はよく見えない。

そして、末っ子役の松坂桃李。江ノ電が好きで、保線係として勤めている。運転手には興味ないというのと、電車に乗るといろんなことが気になる点は、こういう男の子いるよね!という感じ。そういう素直な感じが彼には似合う。が、星野源と愛人関係になってるのは突拍子もない感じ。でも、こういう役がらを姉たちは「なんで!」とは言えない。2025年、そんなことを否定するような世の中ではないということだ。まあ、それが21世紀が四半世紀過ぎようとする今の現実である。今年は昭和100年だというが、昭和の醜い心の思い込みは、かなり洗われてしまったようだ。

そして、ドラマはそれぞれの結婚や未来についての希望みたいなものを姉弟ケンカとともに散りばめて描いていく。こういうドラマの描き方の塩梅みたいなものが最近の野木脚本はさらにうまくなっている。それは「海に眠る〜」でも感じたことだ。それぞれのキャラがしっかりみている方の脳裏に残るのだ。

そして、舞台に鎌倉と釜山を選んだのもなかなかである。「鎌倉なのに渋谷です」と言いながらも渋谷が出てくるわけではないが、そういうさらりと脳裏に残る言葉を入れるのもオシャレである。そして、ドラマの最初の方から出てくる「盆石」。枯山水をミニチュアで表現する遊びは知っていたが、これは初めて。これも精神修養の一環なのだろう。そして、家族の在り方も「盆石」のようにどうにでも作れるという感じに私はみたのだがどうだろう。

結果的には、松たか子は最後まで一人を通し、多部は韓国人と一緒になって、日本の出汁を韓国に伝える。そして、松坂は線路を自分で感じながら、愛する男と暮らすという展開。それをこれでいいのかどうかなど、他人がどういうものでもない。個々人が、次の駅を目指して走ればいいということで、タイトルは「スロウトレイン」ということなのでしょう。

現代の正月ドラマとしてはよくできていたと思います。まあ、見ていた私たちも、今年という未知な列車に乗って、一つ一つ駅を目指していきましょう!


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