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「ベイビーわるきゅーれ」アクションシーンは、本気モード。映画としてのまとまりに、エンタメ構築の才能を感じる

ネットでの評判を読んで観たくなって映画館に。池袋シネマロサは、日に1回の上映だが、お客さんはそこそこ入っていた。結果は、アクション映画として、十分に楽しませてもらった。社会に出たばかりの女子2人の殺し屋設定は、ある意味無謀だが、2人の役者を得て、快作に仕上がった。

冒頭のコンビニのアクションシーンで、観客に挨拶してくる映画。そして、それは映画の中身とは、あまり関係ない顔見せ的なシーン。この映画は、筋書きよりも、この主役、高石あかりと、伊澤彩織の芝居を魅せる映画ということなのだろう。そして、異色の活気ある映画が完成していた。

ヤクザが出てくるわけだが、その設定とかはどうでも良かったりする。そして、主人公が所属する殺し屋集団があるようなのだが、それも、確固たる組織が明確にされているわけでもない。ただ、高校を出たばかりの女子2人が殺し屋として生きていける社会がそこに用意されているということしか、観客はわからないが、それでいい映画なのだ。細かいことは考えない。

そして、最初は、2人のセリフが少し早口で聞き取りにくいところもあったりするのだが、2人の演技とは思えない、グダグダな動きが何か面白く、ネットの動画の中に吸い込まれるように見てしまう。そして、社会というものに、普通にはついていけない2人ということはよくわかる。その辺のデフォルメされた日常のやりとりが、気持ちよくもある。この辺りは、同世代の人が見たらどう感じるのか?残念ながら劇場に女子高生はいなかった。

その二人を捉えるカメラの構図もなかなかセンスが良い。二人が新しい住処に向かってスーツケースを転がすところを俯瞰で捉える場面があるが、こういうシーンの考え方、ロングで、いわゆる映画的な構図に落とし込み、二人の性格みたいなものを表現しようとする感じは、かなり濃厚な映画作りができる監督だと私に思わせた。まあ、自分で脚本も書いているわけで、それを考えてもキレが良い。

ガンアクションが見せ場だが、二人がコミニュケーションができずに社会不適合な部分の表現の部分もなかなかのアクション映画だ。二人が出てきて静止しているようなシーンがほとんどない。最後のアクションの発端となる、メイド喫茶でのやりとりも、実に小気味よく、ここで死体の処理の仕方みたいな裏の事情も見せてくる。この辺りは、監督は違うが、風呂屋で殺人の処理をする「メランコリック」に通じるものがある。日本という国は、こういう形で殺人が行われている場所らしい。

最後のバトルに至るのが、親父と兄弟を殺された娘の怨念だというのは、日本のヤクザ映画に通じる伝統的な概念。そこに二人で乗り込んで、皆殺しにするのも、日本アクション映画の伝統!ここで見せる、スタントウーマン伊澤の最後のバトルは、もう一回リピートしたくなる格好良さ。これから、この人、色々使われるでしょうね。21世紀の女必殺拳作れるよ!そして、狂気のように最後にマシンガンをぶちかます高石との見せ場のコンビネーションみたいなものもすごくうまい。彼女もそこそこの運動神経だから成立するのでしょう!舞台で禰󠄀豆子をやっていたというが、確かにその雰囲気はある。

明らかに小予算映画であり、金がかけられていない部分の映像はしょぼかったり、音楽や擬音の入れ方なども、足りない感じがするのだが、映画としては、できる限りのまとまりを作っている。監督・脚本 坂元裕吾、映画が好きなのが良くわかる作品である。もう少し、金をかけたらどんなものが出てくるのか?凄い楽しみである。2021年、生きにくい東京のなかで、今日もこんな殺人で飯を食っている女子がいるのだろうか?と想像し、ワクワクしながら、歩く、帰りの池袋西口の夜であった。


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