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「あのクズを殴ってやりたいんだ(第10話)」ボクシングドラマと玉森裕太の可能性について

初回の冒頭の奈緒のダウンシーンは、このラストバトルのそのシーンだったのですね。見返すと、玉森裕太が会場に駆けつけるシーンまで入っていた。ということは、この試合のシーンは、かなり最初に撮ったシーンだったということだ。そこまで、奈緒はかなりの練習を積んだのだろう。この試合シーンはボクシングシーンとして吹きかけ無しでよくできている。そう、スポーツドラマは、その主役のリアル感が一番大事。それができていたこともあって、ドラマの最終回はなかなかうまくまとまっていた。

まずは、前回、倉悠貴が殺してしまった大東駿介の弟と知り、奈緒がスパーリングで怪我したのも倉の企みで、玉森裕太は、すべて自分のせいで奈緒まで傷つけてしまったと、元のクズ状態に戻ってしまう。そして、彼は工場の社長に拾われたらしく、工員として働いていた。カメラマンの新人賞まで取った後でここに落とすのは脚本としてかなり違和感を感じた。まあ、もう一度彼を元に戻すために落下させたのだろうが、もう一つ面白みを感じない。あと、玉森がいなくなった時点で、玉井詩織が奈緒に謝ってきて、玉森を一緒に探すというのも唐突すぎる。こういうイジメキャラは、そこから優しい女に回帰するドラマが必要だと思うのだが、その辺りがないのは中途半端。倉に関しては、最後まで玉森のことを完全には許せないという感じは、描き方としては良かった気はする。(味方によれば中途半端に見えるでしょうけどね・・)

そんなことがあっても、時が過ぎ、試合が近づくということで、ドラマとしてはクライマックスに向かって勢いがついていくから、見ている方としてはそれなりに盛り上がる。

そして、試合シーンも3ラウンドだろうが、はじめにダウンを喫して、そこに玉森が現れ、声をかけそれで起き上がるというのは、ボクシングドラマの常套手段で、まあ、それでいいのだろう。そして、ずーっと劣勢の奈緒が最後に、相手の手を全て読んで、アッパーカットというのは、まあ感動的なダウンシーンだが、とにかくもそのシーンを奈緒がうまく演じていたことには拍手である。

そして、その奈緒を男の玉森が迎えるというシーン設定は、いわゆる「ロッキー」的なものの逆パターンなのだが、それがおかしくないくらいに、奈緒はいいファイトだった。そして、時代はそういうものを自然に描ける時代になったということだ。

とはいえ、このドラマ、見どころは玉森の波のある芝居だったような気もする。ただの女たらしのクズ男から始まって、カメラマン目指し、その修行シーンから、現場でのプロフェッショナルなシーンまで、いろんな玉森が見られた。彼、ジャニーズ出身の俳優としてはそんな器用には見えないが、真剣に場面ごとにスタンスをちゃんと変えられてるのがいいし、だめ男の演技がこのくらいできれば、男のファンも増えてくると思う。まあ、顔が甘すぎる気はするが、もっとワルな役も可能ではないだろうか?これから、どう育てるのか、今が大事な時期な気もする。

ドラマ全体としては、ちょっと構成がガタガタしすぎなのと、キャラ設定がもう一つ説明くささかったのが難ではあった。あと、岡崎紗絵の役ももう少しなんとかならなかったかな?最後に小関裕太と恋のスイッチが入った感じだったのは良かったが、彼女にはもっといい役を演じてほしい私である。

まあ、ボクシングドラマだったから見てられたというところですね。


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