「虎に翼」さまざまな現代への問題定義を埋め込みながら、法というものが我々を護るためにあることを明確に示した傑作
最初の週から、このドラマはいつもの連続テレビ小説とは一味も二味も違っていた気がした。それは、最初、伊藤沙莉という他にはいない女優さんが作ってる空気感か?とも思った。確かにそれがあるし、周囲の俳優さんたちも、伊藤の芝居を起点として作り上げられていたからかもしれない。主人公は日本法曹界の女性としてのパイオニアをモデルにしている。良くもまあ、そんな一部の人しか知らない方を引っ張り出してくれたと感謝する。
今や、裁判員制度が出てきてからは(流石にそのネタは時代的になかったが)我々も、裁判沙汰のことをしなくても裁判に関わることもあるという時代である。そして、立法がちゃんとした体を成していないのに、内閣は国会を通さずに勝手に閣議決定なる今までに聞いたことの手法で国の事を勝手に進める。そうかと思えば、立法府でズルして金を回していた議員を検察がちゃんと起訴もせずにスルーする始末。いわゆる、当たり前と思っていた三権分立ができていない。そう、憲法ひとつ守れない輩がそれを改悪しようとしている世の中に、このドラマが投じられた意味は大きい。そう、法は私たち国民を護るためにあるのだ、政治家の思うように国民が陥れられるようにあるわけではない。なのに、彼らは憲法九条を蔑ろにし、日本が防衛なら戦争すべきだと言い出し、この平和国家を勝手にいじくりまわした結果、経済まで最悪にしてしまった。そしてその負け戦をした与党は、また、総裁選で遊んでいて、そこで、もはや法を守って国を創ることができる人間は皆無であることを曝け出してしまった。結果的に、好き嫌いの論理で総裁になった石破氏もこの体制を元の豊かな日本にするのは無理だろう。
そう、ならば、憲法から振り返り、日本を立て直すべき時期なのだ。そこに、このドラマは最後まで、山田轟法律事務所の壁に憲法14条を掲げ続けた。
「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」
そう、日本人はこの法律のもとに、平等である。だが、昨今は色んな意味でこれが壊されていることが表面化し、(それはこの憲法ができた時からあるものである)そして、貧しかったり、辛かったりし、自死するものも絶えない国になっている。その上で、マイナンバーカードみたいなものや、デジタルで人を差別するようなことも多く起こっているわけである。そういうものが、ストレスになり、怒りに変化している日本なのだ。そして、政治家たちは、庶民な素朴な疑問には答えない。いや、答えられないのだ・・。
この話は、主人公の伊藤沙莉が、生きることに、自分が興味あることに疑問を持ち、そして法律というものがあり、その学校に女子部ができると小林薫に唆されるように、法曹界に入っていく女子を描いていったわけだ。そして、そこの入る時に、母の石田ゆり子が「地獄に堕ちる勇気はあるか」と聞く。すごい言葉だと思った。そして、その母も伊藤も最終回で幽霊になって、「地獄は正解だった」と笑顔で話し合う。そう、これこそプロフェッショナルな仕事の笑顔である。自分のやったことに笑顔で正解だったと言える人生を全ての国民が送れる社会にすることが理想だ。
そこまで持っていくのに、まずは、大学での仲間たちの出会いがあり、まずは試験に受かるまでが地獄。そんな中で、仲間たちは挫折を繰り返す。この仲間のキャラも、彼女たちと共に、伊藤が最後まで話し合う感じにあったのも素晴らしい脚本だと思った。特に、山田よね役の土居志央梨のキャラはずば抜けて目立ち、彼女にとっても大きなステップになってることがわかる芝居。こういう役の後に彼女がどう演技者として育っていくかは楽しみなところ。
あとは、伊藤の一家をまとめていった、嫁である森田望智の演技も印象に残る。ある意味、彼女の柔らかい話し方がこのドラマを堅苦しい法曹界のドラマにしなかったとも言える。この人も、振り幅が広い女優さんだ。一人一人あげていけばキリがないが、ドラマのチームの一体感としては素晴らしかったと思うし、それを繋いだのは吉田恵里香さんの脚本だろう。ある意味、無理くりとも言える、現代まで続く問題を、恐れることなく突っ込んでいったのはお見事。まあ、原爆裁判のところなどは、ちょっと物足りなかった人もいるだろうが、今につながる法の問題点が次々に浮かび上がってくるこ気味よさは、素晴らしかった。
本当に、法というものは、人の生活に関わるものだということがよくわかった。そんな中、Xの投稿など見ていると、政治家の皆さんも多く見てくれていたようで、そして、やはり色んな意見を言っていただけたのは野党の女性議員が多かった。与党の皆さんはドラマなど見ている暇もないのかもしれないが、・・・。とにかくも、法律を創るお仕事の国会議員の皆様には、法律をよく勉強され、庶民の日常の生活に関してよく勉強していただきたいと思う。そして、より良い国の未来を示してほしいと思うのだ。
最初は、法曹界の話と聞いて、堅苦しいものになるのではないかと不安視していたが、それはいらない心配だった。伊藤沙莉をはじめとしたキャストの皆様、スタッフの皆様、半年間ありがとうございました。私が、少し法律勉強してみようかな?と思ったのですから、素晴らしいドラマだったんですよ。すぐにもリピートしたい感じです。ありがとうございました。
次に朝ドラは、すごく心配だが、まあ、それはまた別の話ですな。