「さらば、佳き日(第6話)」子供への憧れと死への憧れ。惑いが画となっている刹那さ
夫婦ごっこが始まって4ヶ月の情景。山下美月の仲居姿が妙に似合っている。まあ、何を着せても着こなしてしまう感じはあるが、どんな役をやっても芯の強さみたいなものが前に出る。ここが彼女の魅力でもある。
そして、浴衣を仕立てる。ドラマの後半はその浴衣を着た山下。華やかだがシックなデザインの浴衣が彼女を一つ大人に見せる。美しい。まだまだ、女優として化けそうな予感がする。そういう意味で、女優さんというのがむいている人なのだろう。彼女を見ているだけで飽きないドラマではある。
その山下が、子供を預かることで、兄との子供が欲しくなる。そして、鈴木に「子供作りませんか?」というセリフ。この言い方もなかなか良かった。男はそれに戸惑うばかり。野獣になれない兄だからそんな対応しかできない。世の中の事件になる近親相姦みたいな話ではないが、こういう状況は今の優しい世の中で意外なほどに数があるのかもしれない。だから、それを夫婦として認めろとかそんなことではない。あくまでも、人の恋の多様性が広がり、それを受容する世の中にはなっていくのだろうが、そこでも許されないのか?というところ・・・。
そして、今回は愛する弟を亡くした画家の谷まりあが出てくる。山下が少し嫉妬しそうな女性としては雰囲気にはピッタリだろう。鈴木はそんな谷に、同じように近親を愛する同志感みたいなものを感じていく。だが、それが祭りの時に仇になり、山下を傷つける顛末。昔からよくある嫉妬の風景ではあるが、なかなか綺麗に描かれていた。
それと同じくして、友人が鈴木と山下が夫婦ではなく、兄妹であることを知る。周囲の目が嘘を嘘でなくしていく。ユートピアな日々は4ヶ月で終わり。ここで、山下が握り潰す願いの短冊はなかなかドラマの転換に有効に働いていく。色々、描く画が綺麗なドラマである。
鈴木の仕事の話などが詳細に描かれるわけではなく、たまたま知り合った谷まりあとの仲も、何を求めて心が近づいたのかはアバウトな感じに始まる。谷の弟への記憶が鈴木にあったことで蘇っただけである。だが、時空が心の中をくすぐり、いたずらをする。まあ、あくまでも兄と妹の恋愛など危ういし、いつも不安の中にあるということなのだろう。そういう心理的な難題をドラマにする演出も大変だが、演じる方はなお悩む感じなのではないだろうか?そこの難題を次々に突破する感じでドラマが進む感じは好感が持てる。
ここまで見てきて、山下美月の演技は、今までの彼女の中で最も秀逸だと思う。そして、年齢的にも女優さんとして大きくなっていく時なのだろう。ラストは、結構残酷に流れていく感じも予感できるが、山下の演技を最後まで見守りたいと思う。