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「ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜」オリンピックと感動とアスリートの夢見るものと…。

長野オリンピックのジャンプ団体競技の裏話である。私も知らなかった話だ。その実話をオリジナル脚本で映画化したもの。東京オリンピックに合わせて作られたものなのだろう。

実際は、東京オリンピックの無謀な開催が迫る中で、こういうものを見たくなるか?という疑問が起こる中での公開。結果的には、みんな金メダルを目指す話であり、そのバックグラウンドにナショナリズムがあることで、皆の心が高揚して感動につながるという話だ。そんな、難しく考えないでもいいとは思うのだが、スポーツとは何か?ということは考えなくてはいけないのだろうな、と思ったりしながら映画館を後にした。

映画としては、少しセリフで説明しすぎる感がある。つまり、テレビドラマ的な作品ではあるのだ。もう少しドキュメントタッチで作ることも考えたのかもしれないが、正攻法でわかりやすく作った感じ。田中圭や山田裕貴や小坂菜緒、などの演技はまあまあのもので、もう一つ飛び出す感じではない。多分、その辺も映画的には弱いのだと思ったりする。

私的には、夢がやぶれ、主人公のプライドが崩れ、さまざまな葛藤の中に入って、自分が目指していたものを客観的に見るようになれて、未来が見えてくるような部分を、もっと映像の中に表現してほしかったかな?というのはある。

しかし、オリンピックを描く以上、あくまでも「金メダル」なのですね。最近は、ビジネスライクなオリンピックになってしまい、その向こうに金の臭いしかしないのが、胡散臭くも感じる私であるので、こういうドラマに素直には感情移入できなかったりする。でも、考えれば、1998年、長野オリンピック当時には、私も、ここにいるジャンパーと同じように「日本がんばれ」という心でこれを見ていたのは確かだ。そう、あれから四半世紀近くたって、こういうドラマを見せられても、なかなか感動の域に達しないようになってしまったというのもあったりするのだ。そう考えると、作るのが遅かったのかもしれない。

後半の、吹雪の中のテストジャンプのシーンはそれなりに盛り上がるし、面白くもあった。彼らがいて、日本に金メダルが転がり込んだのも確かだろう。そして、原田選手が、西方、葛西、両氏の私物を身につけて大ジャンプにつなげた話など、さらりと感動的でもある。だが、キャラクターの心の中を映像に紡げたか?と考えるとそうはできていない。ただただ、うわべの感動の中で、スクリーンはクレジットになった。

多分、映画自体が中途半端なところも多々あるのだろうが、私の心の中も中途半端な位置にあったのだろう。そして、スタッフは、この聴けば感動的な実話を平板にしか描けなかったということだ。もっと、人間が何故この話に感動するのかという部分を多角的にとらえながら、オリンピックに挑む意味合いみたいなものを感じさせて欲しかった気はする。

しかし、こういうの見ても、東京オリンピックが全く楽しみでなく恐怖にしか感じないのですよ…。


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