「グレイトギフト」多角的に闇を追い詰める医療サスペンス
初回は予想以上に面白かった。さすが黒岩勉というところか。日本のテレビドラマという世界の中で、ストーリーを作り、その世界を広げる力は今や一番かもしれない。自分で書いていて楽しくて仕方ない的な脚本だ。
主演は反町隆史だが、多分、こんな役を彼がやるのは初めてではないか?うだつが上がらず、コミュニケーション能力がなく、顕微鏡だけが会話の相手のような病理医。そして、妻(明日海りお)は命の瀬戸際を彷徨って同じ病院に入院している。娘(藤野涼子)には、全く馬鹿にされているという役。脚本の面白さもあるだろうが、反町のこの役に対する思いは初回の演技で十分に伝わってきた。これから事件がさまざまな展開を見せる中で、反町の演技がどのように変化していくかは、このドラマの大きな見どころであろう。
ドラマは、元総理がこの病院に検査入院して急死したところから始まる。死因は心不全とされるが、反町のグループは死因調査のために遺体を解剖。そして、反町は頸の黒子のような黒ずみに気づき、検体を採取すると、そこに「未知の球菌」を発見する。
もし、この球菌が誰かの手によって故意に患者の口から投与されたなら、これは殺人だ。そして、この球菌が時間が経つと消えるようなものであるなら、かなり計画的なものとも考えられる。それを警察に話して刑事事件にするかとも考えるが、反町は病院の理事長(坂東彌十郎)に判断をまかそうとする。そして、その時、理事長は裏金の受け渡し中。そこで、反町は理事長に球菌の話をして、それを隠蔽する代わりに、妻の手術を早急にできるようにしてもらう。ある意味、この妻の生死の話があって反町の正義感みたいなものが歪んでいくのがこのドラマの肝なのだろう。
そして、また突発的な心不全で亡くなるものが出る。妻の手術ができるように進んだところで、妻の手術を託すことになる心臓外科医の佐々木蔵之介に球菌のことを話す。そして、犯人がまだ潜んでいる以上危険な旨を話すが、佐々木はその球菌の存在を証明しないといけないから、反町にそれを培養できないかという。それを教授会までに進めろと・・。
培養はできた。そして、佐々木にそれを渡すと、彼はそれを実験したのだった。理事長の飲む水にそれを入れて試したのだ。すると、ほぼ一瞬で理事長は心不全で亡くなってしまった。観ている方としては。この曲者の理事長を動かすためにドラマが進むようにも見えたが、初回で殺されてしまうとは、こういうところは黒岩脚本のうまさでもありますよね。そして、テレビドラマ的な展開。
つまり、佐々木は自分の出世のためにこの球菌が使えると感じ、それに「ギフト」という名前までつけて、自分の必勝アイテムにしようと考えるのだ。そして、反町は妻の手術で脅迫されながら、佐々木に組みさせられたわけだ。そして、そんな話をしている中に警察に尾上松也が入ってくるのもうまい切り口だった。つまり、佐々木、反町、尾上のトライアングルの中でこの事象が動くわけだが、それがこのシーンでわかりやすくなった感じ。
とはいえ、その向こうに真犯人がいるというのがこのドラマの面白さであり、その目的、病院への復讐か?それ以外の何かなのか?というところがどういうタイミングで暴かれていくのかというところ。そのテーマ性は「新空港占拠」と似たようなところがあるが、こっちの方が犯人が見えない分、ミステリアスで面白い。そして、新しい「白い巨塔」の物語であるとことも期待したいところ。
この話のアイデアは、やはり「新型コロナウィルス」からきているのだろう。それが故意に世界中にばら撒かれたという噂は今でも耐えないし、ある一部の人はそれを信じ込んでいる。そして、もし、そんなに表面化しないような新しい殺人ウィルスが存在したらどうなるか?という話を考えれば、もはや、世の中の死因自体が操作できてしまうわけで、「ギフト」というより「ゴッド」に近いようにも感じる。
女性陣も、倉科カナ、波瑠、小野花梨、片山萌美など、なかなかの布陣。初回では、元総理の愛人の倉科がなかなか大人の雰囲気を出して色っぽかったですね。
佐々木は、多々の自己の欲望だけにそれを使おうとするものだが、それが許せない心を持つ反町がどう動いていくかは興味深い。そして、この「ギフト」がどう作られたという発端のところも大事なところだろう。黒岩勉脚本がどこまで盛り上がらせて、何を問うのかはまだわからないが、とても今後の展開が楽しみな作品だ。