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「院内警察(第9話)」感情が乱れる中で天才が堕ちていく姿の刹那さ

少し前から、印象的な役として語られていた少女、梨里花の死は予感はできたものの、このドラマの中では、あまりにも刹那い事象である。ある意味、ここでの主役、瀬戸康史の妹の話ともリンクさせられていたわけで、彼は本気で彼女を助けたかったことは確かだし、彼女と関わった人々が両親と共に手術の行末を見守った画は緊迫感があった。

そして、手術中も、理由がわからないままに、心臓がなかなか復帰しないという事象も起きている。人の命とは、論理的な知識だけで救えるものではないということをここでは教えてくれる。多分、この時点で心臓が再始動したのは、患者の気の力と考えていいだろう。人の身体は思いもよらぬ奇跡を生む力を備えているということだ。そして、医師の思いの強さもそこにリンクしていくと考えて良い。

だが、妹のことも含め、いろんなものが瀬戸の感情を動かし、いつものポーカーフェースというか、落ち着いた態度で手術に望めなかったことが致命的だったのかもしれない。手術前に桐谷健太が彼に呼びかけ話したことも印象的だが、彼らは信頼しあっている仲ではないから、それが奇跡のパワーにはならなかったという流れに書かれた脚本かもしれない。

シンプルなドラマの流れの中に、いろんなことを視聴者に考えさせるシークエンスはなかなかのものだった。手術の前に、患者のことを思い、心の中で必死になっている長濱ねるの姿も印象的だった。彼女の演技、最初の方は派手さもなく目立たなかったが、この役で、徐々に自分の院内交番での仕事というものを理解し、そこにのめり込んでいく姿はなかなか感動的であり、彼女も女優としてこの役で一つ骨太になって来たようにも感じる。

患者と最後に話す姿も印象的だったし、飲めるわらび餅を最後に買ってきて、彼女を供養する姿も素敵であった。まだまだ、印象度は薄いが、彼女の今後が楽しみになってきたこの役だ。

そして、前回、入山法子が飲んでいた薬が偽薬だったことを知り落胆する桐谷をもう一度感化するのも長濱だった。この時点でこの部署のパワーになったのは休憩しにくる医師や看護師ではなく、長濱だったことは確かであり、それに促され、桐谷はもう一人の隠されたデータ改竄を見つける。そして、その改竄者は瀬戸康史。

次回が最終回ではないようで、あと2回か?瀬戸は、今回のラストで手術をまともにできる状態ではなくなってしまった。桐谷が追う治験の謎がバレればまた窮地に追い込まれる。あと2回で、彼はただ堕ちていくだけなのだろうか?彼をドラマとしてどう描きたいのかは気になるところだ。


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