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「Silent(第7話)」声がなくても、心は伝わっているというラスト・・・。

話は、思うほどに進んでいないのに、すごく濃厚な1時間という感じである。ラスト、上の写真の「抱きしめる」という表現に持っていくために、ここまでのインターバルみたいな流れがあるのだろうが、私たちは、このスローモーションで流れているような心の機微みたいなものを堪能させられている。ここにきて再度思うのだが、テレビドラマとして、初めての空気感みたいなものを新鮮に味合わさせてもらっている。

先週に続き、奈々を起点に話が回っていく。紬が、想が声を出さないことを気にする。ということで、今回は最後に想が「紬」と声を出す展開なのか?と想像しながら見ていたが、そんなヤボなものは通り越して抱きしめてしまったということだ。あくまでも、このドラマの世界で言いたいのは、沈黙の中の気配や手触りなのだろう・・・。

そして、声の話を前に出すためか、想の仕事の風景が初めて出てくる。いわゆる、リモート中心の文筆業というところなのだろうか?脚本の中にこのシークエンスを挟むのは、結構度胸がいる感じはする。ここまで出てこなかった日常の場所を出す意味があるの?というものは感じるからだ。でも、それもさらっと通り過ぎる感じで描くことでドラマの中で邪魔にはなっていなかった。

今回も奈々の中のネガティブな気持ちみたいなものがウロウロしているのがたまらなく刹那かった。もう、別れようと思ったのだろう、本を返しに来たシーン。そして、紬から再度話したいと言われて向き合うシーン。最後に、図書館で想と話すシーン。みんな、優しい人々の中にいるのだが、奈々は自分のアイデンティティがその中で前に出ていかないのがもどかしい感じ。それはマイノリティであることの運命的なものなのか?その歯痒さの中での想との会話での図書館での笑顔は、少し虚しい。そんな、奈々が風間俊介演じる先生と知り合いだったとは・・?こういう意外な接点も用意してあったのねと驚いた。奈々がどのように未来を掴んでいくのかは、このドラマの中でかなり重要なところなのだろう。見守るしかない。

今回は湊斗は、もう声でしか出てこない。そして、それは紬が湊斗に対し「想の声を聞いたか?」と訊ねるためだったりする。こういう場面も出しながら、想がいつ紬の前で声を出すのか?というシーンを想像しながらドキドキする自分がいたりする。それは、最後の最後までお預けなのですかね?

とにかくも、ここで7回が終わり、ドラマはやっと想と紬が元の高校生であった時の心の位置に戻ってきた感じだ。ラストの2人の抱き合うシーンは、着ているものもあるが、とてもモコモコ暖かい感じ。セリフが少ない分、その触感が画面上から伝わってくる。

ラブストーリーは、最後に一波来て、ハッピーエンドという作りが普通だろうが、この脚本はそんな常套手段は取らない気もする。だいたい、ここまでは緩やかな波の連続で大きく心が刺激的に動くことがない。だからこそ、すごいリアルな感じでもあるし、この優しさはありえないだろうと思うところもある。

そして、見終わった後に、今日も皆穏やかに幸せな日々を暮らせたらいいね・・・という気持ちにさせられるのは、とてもありがたい感じではある。

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