「Silent(第9話)」過去と現在がつながるという現象が起こることで幸せな笑顔になるものたち。
ラスト近く、いつもの酒場で飲んでる湊斗。そこに春尾がやってくる。そこで春尾が奈々からの手紙を落とし、湊斗は「知り合いなのか?」と聞く。春尾は頷き、「八年ぶりだから」という。ここにも、過去と現在がつながる二人がいる。
今回の話は、じっくりと想の過去と現在が繋がった話をしていくわけだが、このドラマ全体がそういう宇宙の不思議な縁みたいな中にいるということだろう。皆がそれなりに過ごしてきた8年ほどの時間は、ある意味、ここに結実するために、いや、過去のその地点とつながるためにあったということなのかもしれない。そして、人の心、素直な心は8年の時差など飛び越えてそこに到達できるということなのだろう。8年を刹那にワープさせる魔術のようなドラマなのである。
来週が最終回でないようだから、あと、2回というところだろうか?その着地点はどうなるのか、いや、そこに急ぐような脚本ではないのが、すごく気になる。ゆっくりした優しい時空の中で、登場人物たちが皆穏やかに現在を過ごすことに安心できれば、それでいいではないか?とさらっと私たちに諭しているようにも見える。そう、生きてること、今日の出会いがあること、過去の全てがあなたの宝物だし、今日の全てがあなたの宝物だ。言葉、音がなくても、その幸せ、感謝の気持ちは何も変わらない。なんか、ここにきてそんなことをドラマに教えられてるように感じた今回の流れだった。
そう、大学に入った想が、耳が聞こえなくなることで、サッカー部の寮に居られなくなり、家族全体の空気が重くなる。想がCDやiPodに対して「イヤホンが壊れた」と言いながら、当たるシーンはなかなか凄いシーンだと思った。耳が聴こえないということは音楽からの別離であり、楽しむことを失くすことだったのだろう。そう、ふと思ったが、そう考えると、ベートーヴェンってやはり凄いですよね。彼は聴覚を失っても譜面で音楽と格闘できたのだから・・・。
姉に子供ができるが、遺伝で耳が聴こえない子が生まれてくるのではないか?という不安。これも、さらりと描かれるが、家族にとっては大きな問題だ。それを責められる篠原涼子の姿も印象的だった。そんな篠原が今の想と対峙して。彼が、高校の仲間に再会して良かったというところで、安心する。実家では、その篠原が捨てようとしたCDを棚に収めながら思い出に浸る。確実にこの何ヶ月の間に、彼の8年間の苦悩が、過去と現在がくっつき、いろんな思いが吹っ切れたということが、今回まとめられよくわかった。しかし、まだ想と紬は付き合っていないという・・・。そう、それは魔法の鳥羽口が開かれたところなのだろう。
そんな想が、紬の働くタワレコにCDを買いに来るシーンは今回の涙腺崩壊の場所であろう。想は何を買いに来たかといえば、青春の途切れたシーンを繋ぎにきたわけだ。そのためには、そのCDが必要だった。そう、そのCDは、二人に同じメロディーを奏でるアイテムであるわけだ。耳が聴こえなくても、歌詞は読めるし、そこからメロディーは聞こえてくるのだろう。人が脳裏で感じるものは無限大だ。本当に、幸せなラストを見てみたいと願うばかりである。