「下剋上球児」女性チームでの制作で、新しい形の野球ドラマを作っていただきたい!
新井順子プロデュース、塚原あゆ子演出、奥寺佐渡子脚本というコンビは、一昨年の同じ時期に放映された「最愛」と同じだ。そのトリオが作る、弱小高校野球部が甲子園を目指す話だ。男の世界として描き続けられた野球のドラマを彼女たちがどう魔法をかけて仕上げるのか楽しみな作品。
主演、鈴木亮平。日曜劇場は「TOKYO MER〜走る緊急救命室〜」以来の主演。心の内に過去のトラウマ的なものを抱えているのは、ここでも同じであるが、そういう役が似合っているということだろうか?というよりも、リーダーとしてチームを引っ張っていく上で、そういうものが力になるとも言える。どちらにしても、鈴木にはこういう役があっている。
普通なら、「ROOKIES」のように、監督がやる気があって、ダメ生徒を集めるみたいな展開が多いのがこういうドラマだ。それは、「七人の侍」みたいなルーティンが日本人のDNAに入っているからだろう。だから、女の部長である黒木華が、鈴木を説得していくような状況は、現実にもあまりないだろう。だが、このドラマ、女たちが鈴木を鼓舞するようなことが多くあっていくのかもしれない。女たちが作る野球ドラマだからというのもあるが、時代がそういう流れに変わっている気もする。だから、黒木や、鈴木の妻役の井川遥の存在感みたいなものが、初回から前に出ている感じの脚本であり、ここはとても楽しみなところ。
資産家である、小日向文世が、息子の受験失敗のリベンジでもあり、野球部に口を突っ込んでくるのは、少し、うざったいが、この農場を野球グラウンドにしたという話は、「フィールド・オブ・ドリーム」にかけたのだろうね。そういうことを想起させる舞台作りはなかなか見る側もワクワクする。
そして、鈴木がまだ監督を受諾していない初戦。相手の高校から試合をキャンセルされ、町のおじさんたちの草野球チームとの対戦。よくあるパターンで大差で負けるのだが、点が入るところはドラマチックに描き、鈴木を野球の世界に戻させる感情がうまく描かれていたと思う。草野球チームの中に元プロ野球選手の鳥谷氏がいたが、これからも出てくるんだろうか?セリフ喋るのが聞きたいところ。
そして、チームのキャプテンは、菅生新樹。菅田将暉の弟だが、ここで、少しメジャーになってくるか?全体的に生徒たちは、「ROOKIES」ほどの派手さはないが、ここから新しい個性が生まれてくるかどうかは楽しみではある。
そして、試合シーンにアニメを入れ込んでいるのも新しい感じはした。昨今の映像処理でも、あまりやっていなかった手法であるが、印象には残りますね。まだ、色々なことやってくるのかな?そういう点も新しいものを貪欲に追求して欲しいところ。「VIVANT」の後だし、下手なもの作れないでしょう。
とにかくも、初回は鈴木が監督を受けるまで、ここからどんなハードルをチームに与えて、甲子園まで持っていくか?楽しみではある。野球シーズンが終わる頃に始まる季節外れ感はあるが、だからこそ、野球ファンとしては楽しめるというもの。熱いエネルギーをいただける作品を期待します!