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「夕暮れに、手をつなぐ(第10話)」恋愛ドラマが輝く時代の復活のプロローグみたいな・・・。

北川悦吏子氏、渾身の最終回という趣だった。それは、彼女の脚本家としての技量が蘇ってるのを感じさせるとともに、こういうベタな恋愛ドラマをもっと見たい!という私の心をくすぐった感じだった。

最後に、主人公二人が抱き合ってキスのお代わりしてる感じに、時代の平和を感じ、若い二人の希望を感じさせるところは、北川脚本の過去に被る部分はあるが、閉塞的なものから抜け出そうとする2023年にはぴったりだろう。広瀬がパリに向かって、そして3年の歳月が経ったという流れは、ある意味、パンデミックを超えたとも取れる時間軸である。そう、自由な恋の時間が戻ってきたと感じさせるラストだったのだ・・。

最終回は、広瀬すずが、母親と二人で故郷に帰り、パリに旅立つ挨拶をするところから始まる。ここで、松雪と広瀬が本当の親子に見えるところがあった。キャスティングとしてはなかなか絶妙だと思った。そして、過去を清算しパリに旅立つまで、その際に渡される永瀬廉からの手紙の中身が視聴者には伏せられたままになる。後で明かされるその中身はいまいちクールではないが、それがいいのかもしれない。

そして、三年、パリに馴染めないまでも、それなりにデザイナーとしては認められたらしいのがわかる風景が出てきて、そこに遠藤憲一が尋ねてくる。広瀬は「目の前にいる人に服を作ることが楽しい」という。遠藤は、そんな小さい思いの中にいる広瀬に、「神様からもらったギフト」が勿体無いという。この二人の会話が、すべてのモノ作りに関わる人(もちろん、脚本家も含めて)に語られてる感じで刺さるものがあった。ものつくりの世界の中で、楽しむか?闘うか?それは、クリエイターの永遠のテーマかもしれない。

そして、田辺桃子から、「私たちは付き合ってないよ」という連絡をもらう。そして永瀬から、福岡公演のチケットが届く。二人の思いが近づこうとしてるのに、広瀬はそれに素直になれていない感じ。そこに戻るのが怖いというような感じの中で街を彷徨う。そして、二人の出会いの場所に。こういう恋愛のよくわからない心根と、その浮遊感を描くのは、北川脚本の本領発揮と言えるだろう。そこからの、ドラマのファーストシーンへの回帰。そして、その恋愛は運命だったというように、二人は思いを共振させる。とにかく、刹那い音楽が流れる中で、心がシンクロするまでを見事に描いていた。

そして、このドラマ、広瀬すずがやはり輝いていたし、永瀬廉も少しもどかしいクールな男を素敵に演じていた。タイトルのところで流れなかったヨルシカ「春泥棒」がラストに流れるのも、なかなか洒落ていました。この曲を聴くたびに、このドラマをこの二人を思い出すだろう感じがドラマとしては良くできてると言えるわけであります。

そう、なんかパンデミックで時代の中で私たちは疲れ果てた感じがある今、こういう恋愛ドラマはすごい養分になる感じがした。最近の日本のテレビドラマは恋愛成分が少なめになりつつある。このドラマを見て、やはり正攻法な恋愛ドラマが時代の中で輝くことは重要だと感じたりもした。そう、世界中が恋していれば、世の中めちゃくちゃ明るくなっていくのですよ。

個人的な感想ですが、この作品で、北川悦吏子が「恋愛の神様」と呼ばれる脚本家として復活した感はありますが、次の作品が大事かな?というか、楽しみになりました。

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