「いちばんすきな花(第10話)」世の中は間違い探し?数が多い方が正解?
ドラマはクライマックスにあるのだろうが、そんなことどうでもいいように、生方美久氏の自問自答が濃密に続いているような10回目。あまりに濃密すぎて、この回2回見てから書いている。
このドラマ「男女の友情は成立するか?」というテーマが示された中で始まっているが、ここまで見て思うのは「世の中の生きにくさ」みたいなものをまとめていきたいみたいなところなのかもしれない。"男女の友情"というのもその一つであり、一緒に楽しそうにご飯食べてるだけで、「恋人?」というフラグが立ってきて、噂が流れ自分の本心みたいなものを隠す羽目になったりもする。そんな経験をしたものは多いだろう。だから、初回で仲野太賀がゆくえとカラオケに行けなくなったりしたわけで、それが世の中の多数決の論理なのだ。
だから、今回、夜々が紅葉と居酒屋にいて、紅葉のバイト仲間に絡まれたような出来事は日常の中に普通に落ちている。だが、そこで夜々のように「バカ」の連打で相手を痛めつけるようなことはあまりないだろう。ここでの夜々は脚本家の心の中を一気に吐き出した感じにも見えた。そして、ここで「ヤフコメ書いてるのお前たちだろ!」という罵声を吐いた後で、ネットで世の中が動かされている不気味さみたいなことが描かれていく。
そこから、ゆくえの教え子である玉季と想矢のシーンに転換していくが、彼らもまたクラスメートの視線を「ネットニュースの見出しみたい」と表現する。嘘を本当みたいに言う世界に対してのことだが、確かにネットがなかった時代でもテレビを見ていて協調できないと仲間はずれみたいなことはあったし、そのあとはゲームの話でもそんな感じなのだろう。世の中が「数が多い方が正解」という認識から外に出ていけないのは、昔からなんも変わらない感じだし、ここでは、世代が違っても同じだよというように、中学生のモヤモヤを描いているのだろう。
そんなことを提示した後に、ネットに書かれた「装丁がゴミ」という話に紅葉が落ち込む話をぶち込んでくるのは、やはり現代は友情とか恋愛とか仕事とかいう中でも、ネットがさまざまに影響しているわけで、その辺りを描きたくて仕方なかったのでしょうね。今回の前半はそんな回でした。まあ、ネットがない時代でも近場の噂話や悪口にこんな感じで落ち込むことはよくあったし、まあ、そんな紅葉を慰めようとする3人の在り方は友情でしかない。
で、その後に夜々の椿への気持ちの最終吐露が始まったりするわけだが、椿が全く気がないことを言った後で友情が途切れないのは理想といえばそうなのだが、ちょっと無理がある気はする。ただ、その辺りは年齢が10くらい離れていることで話的にはうまく回避できているのかな・・。それは、ゆくえと紅葉の話も同じですね。しかし、齋藤飛鳥の誕生日に無理なバースデーサプライズをするゆくえの姿がドラマ的に浮いて作られてることも面白かった。こういうイベントで騒ぎたい人には、このドラマわからないでしょうね。そして、齋藤が、4人とはまた違った生物に描かれてるのは何の意味があるのだろうか?お腹が一杯になるからと、お寿司のネタだけを食べるというのは?どういう意味があったの?まあ、そんなことするなら刺身買ってくればいいのだし、お寿司握ってる人の気持ちがわからない人がお寿司を食べる状況がわからない。しかし、世の中で生きにくいような人ばかり出てくるのがすごいというか、そこが私が共感してしまう原因なのですよね・・。
そう、日本の学校は協調性とか言って、他の人と違うことをしない子を良い子とし、個性を殺すことで世の中を平和にしようとしてきたが、それはさまざまな個性のエネルギーを消してきたわけだ。
そして、今回の冒頭に出てくる美鳥が勘違いされる話もまた、よくあることで、洗脳された頭は時に客観性というものを考えずに他人に対し穿った見方をする、そして、そんな連続の中で、人は自分の個性がなにかも主張できなくなっていったりしているわけだ。そういえば、花屋で椿が弟に、「好きな花だけまとめてもいい花束にはならない」と言われたりしていた。そして「組み合わせが大事なんだ」とも言う。確かに人間も同じであり、美鳥がそれぞれと2人組だったから、この4人組なんだと言う論理はわかりやすい。そしてそれは5人組にはならないという話も深い。
大きなドラマを描かれない中で、多分、このドラマに対しいろんな方向から眺めている方がいるのだろうと思う。私がここまで書いてきた意見もただの一人の変わった人間の意見でしかない。ただ、そういう「個」というものを大切にすべき時代に転換するときに我々はいるような気がしてならないのも私だけではないだろう。そして、その向こうに感じる世界では男女の友情が成立するのが当たり前の世界なのかもしれない。
次回がラスト。脚本家はどんな景色を私たちに見せて、そこで何を問うてくるのかは楽しみである。早く見たい!