「アンチヒーロー」裁判とは、勝者が真実という世界である限り、巧みな嘘も戦略になるということ?
なかなか硬質の法廷ドラマになりそうな匂いはする。だが、よくある冤罪をひっくり返すような正義の法廷劇ではなく、ここでは犯罪者を無罪にするという法廷劇が繰り広げられる。
ラストの方で、主役の長谷川博己が、被告の岩田剛典に「人を殺してるんだから」と言っている。つまり、この事件の真実はひっくり返らないが、判決を無罪にすることはできるというのが、このドラマなのだ。最初から殺人犯を助けるって、長谷川の過去には何があるのか、すごく気になるところがこのドラマの見せどころなのだろう。
そんな、彼の周辺が最初から少しわかる感じも先を見せるために上手い導入だ。娘だと思った近藤華は、獄中にいる緒方直人の娘ということだろうか?で、緒方は何をして獄にいるのか?そして、長谷川との関係は?そこだけでも、しっかり仕込まれたストーリーが見え隠れする感じは好きである。
そして、長谷川とともに法廷に向かう北村匠海も、コンビニの店員に頭を下げる過去があるらしい。そんなところもドラマの中で大きな鍵となってくるということか?そして彼が、このどちらかと言えばダーティーな長谷川に対し、弁護士として何を学ぶのか?その辺も気になる。
もう一人の弁護士である堀田真由は、長谷川のやり方に対し疑問は持っている。今回の子供の証人を使って、加害者の指紋のついたのが事件当日ではないと持っていったところにも、長谷川の仕組んだ子供の記憶のいい加減さを利用したところがあり、自分がそれにうまく乗せられたことを良くは思っていないだろう。
長谷川は冒頭の方で、検察の証拠を全部覆せば勝てるという。そして、証拠をいっぱい出してきた時は、検察に徹底的な証拠がない場合だとも言う。確かに、ドラマの案件の証拠は色々と甘い。しかし、担当検事を馬場徹が演じてる時点で、完全に負ける気がするのは、ドラマ的にはいかがなものかw
今回は現場にいたと言うことで証人になる、一ノ瀬ワタルをうまく使って、検事のやらせ的な動きを全て覆してしまう技は、まあ、検事が悪いのだが、議事が終わった後で、このことを裁判員に印象付けるのはすごい効果的には見えた。こう言うドラマを見ると裁判とはどうパフォーマンスするかが大事と言うことがよくわかる。そんなものだから、有罪を無罪にはできると言うことなのか?
いや、裁判の基本は「推定無罪」と言うところから始まらなければいけないわけで、検事がはっきりした証拠を出せないのなら、それは無罪にするしかないのだ。ある意味、その場まで考えて、完全犯罪をする物語も作れるよね。それ、新しくない?
だが、初回で、長谷川は一方的に事を進めていたかと思ったら、検事は、見つからなかった凶器を証拠として持ってきた。まあ、その出どころもよくわからないが、長谷川がどう出るかが次回の見どころなのだろう。
4人の共同脚本のオリジナル作品。なかなか、ドラマ構造は見た目よりも複雑になっていきそうに感じる。長谷川のキャラは明確だから、そのキャラを私たちが好きになるかどうかが大事なところのようにも思える。昨今の日曜ドラマにしたら、かなり陰鬱な要素も多い気がするが、ちょっと変わった法廷劇、それなりに楽しめそうではある。