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「ヴォイス・オブ・ラブ」ディーバの人生の苦難の部分が、今ひとつ感動にはつながらないのが辛い

最近は、元日は映画館に行くのが恒例になっている。まずは、映画ぞめというところだ。ということで作品を選ぶのだが、今年は、ハリウッドのものではなく、カナダとフランスの合作になる、この映画を選んだ。セリーヌ・ディオンの半生を綴る伝記映画である。ヴァレリー・ルメルシエの監督、脚本、主演というほぼ一人舞台の作品だ。

そういう意味では、ハリウッドで作られる伝記映画ほど、派手な映画ではない。ということで、最初の方は少し眠気が襲ってきた。まあ、映画館の暖房のせいもありますが…。

14人兄弟の末っ子という環境は、まあ導入としては、コミカルで良いのだが、そこから、歌の才能を認められるところまでが、どうも今ひとつ勢いがない感じの映画だった。歌手の始まりが12歳だったりして、あまり苦労みたいなものも感じさせないからだろう。

そして、26歳年上のプロデューサーとの恋愛が、結構メインで描かれるが、その辺りも、それなりに心の揺れを感じさせるが、別に若い男がそこで出てくるわけでもないので、見ている方にはスムーズに見えたりもする。

ある意味、末っ子のわがままみたいなものが通用していく分、最後に最愛の人を亡くした後、一気に歌えない状況になるのだろうが、そういう心の起伏の表現がもう少しダイナミックでないとドラマになりにくい。

そして、楽曲は、セリーヌのそのものを使っていないのは、セリーヌ自体が色々難色を示していたのだろうか?と穿った見方をしてしまう部分もある。楽曲の使い方自体もあまりうまくない。そう、見終わった後に爽快感がないので、エンドクレジットに流れる楽曲にあまりシンクロできなかった。全体的に凡庸な感じであったというしかない。

一つ、いいシーンをといえば、ショーの前にドレスはこれじゃないと、急遽着替えるシーン。これを進言する、メイクの同性愛者の男は印象的であった。

セリーヌ・ディオン自体がまだまだ現役の歌手であることで作りにくい部分があったのだろうが、それでも、彼女をリスペクトして監督は自ら主演して作ったのであろう。そう考えるとパワー不足であった。

ラスト、歌い手であるスターの自分を捨てて慣れない街を歩き、放浪する彼女。そこにかぶさって絶世する彼女でエンドマーク。このラストの構造が、監督の思いの明確さが欠けていることの証明のようにも思えた。まあ、それはそれで監督のプライベートな映画というならありですけどね。

とにかく、見終わって、セリーヌ・ディオンの楽曲が頭の中を延々とリピートしてくるようなものを期待していた私には消化不良だった。とはいえ、日本で作られるこういうような映画やドラマを考えたら、完成度は高いですけどね…。



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