「リバーサルオーケストラ(第10話)」オーケストラとは心を通じ合える共同体
予想通りのラストであった。だから、とても清々しかった。今期のドラマの中では飛び抜けて達成感のあるものだったと言えるだろう。とにかく私はこういう、人がものを仕上げていくドラマが好きである。
最終回は、今までの9回のドラマの集大成として成立していた。そのオーケストラに足りなくなるピースが田中圭になるとは読めなかったが。そう、何故、彼が高階の指揮者になる話を受けたのか?この辺の説明があまりないのだ。結果的には、門脇麦とオケのみんなの声を受けて玉響に残ることになるわけだが、田中の思いみたいなものをもう少しわかりやすくして欲しかった。
同時に、コンサートが終わった後で、加藤雅也と永山絢斗の話で、彼らも玉響の演奏に感銘を受けたのはわかるが、それにより永山が何を目指そうとするのかみたいなところもわかりにくい。永山は小さい頃からの門脇のライバルとして登場するが、その復讐心的なものは描けていても、音楽に対する想いみたいなものがいまいちわかりにくかった気がする。その辺は、このドラマで物足りなかったところである。脚本家としては、「いうまでもないじゃない」というところなのかもしれないが・・。
とはいえ、玉響の団員の皆のキャラはとても丁寧に描かれ、そして、その人間性が繋がっていって、いい演奏ができるようになっていく過程も10回のドラマの中でうまく描かれていた。それにより、最後の演奏も盛り上がったし、観客の中に見えるその関係者たちの笑顔も効果的になっていた。成功達成型のドラマを正攻法に撮ることは、簡単なようで意外に難しい。この楽団の成り立ちを描く上では、とてもうまくできた脚本だったと思う。
そして、前にも書いたが、このドラマの主役、門脇麦のチャーミングさには、私自身がイチコロだった。自分の感情を可愛く表現する様はある意味リアルさに欠けるところでもあるのだが、そこがすごく良かった。そう、門脇はそういうふうにキャラを作り上げていたわけだ。だからこそ、ラストの田中と手を繋いで未来をおねだりする感じになる。今は可愛い女優さんが多くいるわけだが、こういう演技をできる人は少ないと思ったりする。
柿落としの劇場というのをどこで撮影するのか?それが初めから疑問だった私である。埼玉県にそれに使えるような新しい劇場はないなと思ったら、ロケで使われた劇場は「高崎芸術劇場」。新幹線が止まる駅だとはいえ、高崎にこの規模の新しい劇場があったとは驚き!でも、やはり近代的な劇場の外観があって、このドラマの最終回は盛り上がった感じがある。もしかして、この劇場があって、このドラマは構想されたのかもしれない?
まあ、最終回は、田中が逃げ出した以外はそんなに多くのドラマを入れずに、最後の演奏会を堪能できるように作られていた。これで、正解だろう。ワンクール、しっかり楽しませていただいたが、この後の玉響の姿もみてみたい気はする。続編かスペシャルを是非お願いしたい!