「さらば、佳き日(第5話)」兄と妹に戻るか、夫婦ごっこするか?
今回のラス前の友人と話している山下美月の荒んだ表情がなかなかリアルというか印象的だった。その後の決断として兄のもとに戻り、安心したような顔で抱きしめてもらう。どんどん女優の表情ができるようになってきている山下である。最近の若い子の芝居は恐ろしいほどにこちらの予想を超えてくる。ある意味、映画黄金期と呼ばれる頃よりも女優の在り方はすぐれているように私は感じる。そう、演出家が指示しなくても、それなりの演技を自分で引き出してる感じが興味深い。
先週の兄とのキスから、兄が倒れ、自分の部屋に連れて行った山下。その流れで、兄の再就職先に一緒についていく。ここの銭湯を改造してる会社、なかなか味がある。そこの社長の勝村政信とその妻の中島ひろ子も、なかなか雰囲気が良い。そして、そんな彼らの前で、自分たちが「夫婦」だと名乗る山下。このドラマで、山下がその意思を初めて声に出していったシーンだと思う。そして、鈴木に山下はいう「兄と妹に戻るのか?夫婦ごっこをするのか?」なかなか濃く印象に残るセリフだ。でも、「夫婦になるのか?」ではなく「夫婦ごっこするのか?」というところは、未来の確定ができないところにあるということだ。それだけに、このセリフは刹那すぎるし、そこに回答できない鈴木がいる。
そして、このセリフの後に、一旦、東京に戻り、最初に書いたシーンになる。そう、この一旦、自分の心を確認する時間があることで、この話の危うさをうまく表現できてる感じはした。近親相姦に至るかどうかという危うさをその行為ではなく、こういう描き方でうまく空気感を出してドラマを進めていると思う。そして、それができているのは、山下の演技があってこそだ・・。
そして、山下の友人の加藤小夏もまた、悩んでいる。就職活動に専念できないのと、幼馴染の伊藤あさひに気持ちがあるのに、伊藤が男が好きだということがわかっているから。加藤の刹那い状況の演技もまた秀逸である。先にも書いたが、彼女、いい女優さんになれる素養を感じる。このドラマを見ている作り手へのアピールはできている演技だ。この二人の今後の描き方も興味深いところだ・・。
ラスト、結果的に、二人を知っている人がいない土地で、夫婦ごっこが始まるわけだ。予告を見ると、ここで鈴木に興味を持つ女が出てくるようだ。まだまだ、ドラマの最初に出てきた二人暮らしに至るまでに紆余曲折があり、その心象風景をどう描いていくかというところがポイントのようだ。なかなか動きが遅いドラマだが、連ドラという世界だから描けるスロースタイルでもある。ドラマ的には、面白くはなってきているので、まだ期待はある。そして、山下美月と加藤小春の演技にここからも注目である。
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