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「BAD LADNS バッドランズ」ドラマのフォーカスがイマイチ見えにくく、爽快感や刹那感みたいなものが見えてこないのが欠陥である

黒川博行原作、原田眞人プロデュース、脚本、監督作品。昨年の「ヘルドックス」がなかなか爽快なアクション作としてできていたので、それなりの期待はしていったのだが、舞台が大阪の西成ということもあり、まずは大阪弁が聞きにくく、冒頭からもう一つノれなかったというのがある。

そして、まず舞台となるのが、オレオレ詐欺など、特殊詐欺をやってる組織が舞台。それなりに興味深いわけだが、しかし、純真な老人を騙す犯罪劇であり、見ていて気持ちよいものではない。そして、最初から吉原光夫を中心とした警察が動いているわけだが、彼らがそれを追いかける話が結構邪魔なのだ。その本部長役が江口のりこなのに、これがあまりうまく使われていないのもダメなところ。もう、映画なのだから、悪のバカし合いの話だけでまとめていった方が良かった気がする。

主人公はその詐欺の一端を背負う、安藤サクラ。彼女には、なかなか凄惨な過去があり、東京の時に男に飼われていて、DVも受けていた。そのサイコパスの男(淵上泰史)も彼女の行方を探していたり、自分を好きなように扱い一度は逃げていた父親役の生瀬勝久は、自分の手を汚さずに金を集めるタイプで安藤は世話になっているが、好きではない。

その安藤がそんな現実から逃れようとする話に、血のつながっていない弟の山田涼介が絡み、それを現実にしていく話なわけで、最後は確かに安藤だけは自由に高跳びできる段取りでクレジットになるわけだが、全くそこに爽快感みたいなものがない。上記で書いた様々なことが今ひとつわかりにくくつながってくるのもあるが、監督がドラマのフォーカスを持っていきたいところがぼやけているので、観る方がドラマにのめり込めないのだ。原田監督作品としては、それは珍しいことではないのだが・・。

で、主演の安藤サクラ。確かに芝居にソツはないが、この役に魂を入れることができていないような気がした。西成が舞台の映画といえば「㊙︎色情めす市場」とか「一条さゆり・濡れた欲情」などのロマンポルノの傑作を思い出す。あの映画に出ていた、芹明香や一条さゆりには、その町の臭いみたいなものが彼女たちのセリフの強さに投影されたように、すごい閃光を感じた。多分、安藤には悪いが、これはミスキャストだ。今、朝「まんぷく」の再放送をやっているが、安藤は生い立ちも含め基本はこちらの方が合っているということだ。確かに今までも少し擦れた役もやってはきたが、この役ができるほどの経験値はない気がした。つまり、アウトローの怨恨の激しさみたいなものが彼女にはまだ出せないということだ・・。そして、この役、もう少し美形の女優にやらせて、その美形を壊すような演出をすべきだと思う。

そして、山田涼介も、今までにないワル役なのだが、このくらいが限界だよねという演技。昨今はジャニーズも役を選ばないような感じにはなってきていたが、現場の事務所問題も考えると、山田がこういう役を今後やれる確率はすこぶる低いだろうなと思いながら見ていた。最後に淵上を狙撃するシーンはなかなか決まっていましたけどね・・。

キャストの悪いところを書きましたが、基本、脚本の構成が上手くないのだと思います。淵上が女にしゃぶらせるとか、その女がレズだとかいう情報はいるのでしょうか?そんなどうでもいいシーンと警察絡みのシーンを引き算すれば、143分の作品を120分弱にして、わかりやすくするのは簡単なことだと思うのですけどね。

舞台を西成にしたのに、あまり澱みを感じないのも不満。全体のカラーももっと赤暗くしたら雰囲気出たのではないでしょうか?ラストに流れる音楽の旋律はロマンポルノでよく使われたような刹那い旋律。これをここに嵌めてくるというのは、監督はやはり土地に根付いているような深い人間のやるせなさを描きたかったのではないかと思うのですが・・。

そして、ここでストップモーションになる安藤に未来は見えてこないですよね。私的には、彼女は破滅的に戦慄に死なせた方がドラマチックだったと思いますし、それの方が幸せに見えた気がします。



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