「ノンレムの窓」人の心の深層を描こうとするバカリズム
大晦日は紅白の審査員までやってたバカリズム。もはや、一流脚本家、いや売れる脚本家となった証。2023年の「ブラッシュアップライフ」は確かに面白かった。何度も人生をやり直すという、ある意味くどい設定なのに、それを軽やかな話に昇華させたのは、かなりの技量だと思った。その彼の関わるショートストーリーのシリーズの第5弾。20分弱のストーリーで現代のイソップ的な話を創作していく感じは心地いいし、私も好きなシリーズだ。
今回は、3つの話の間にバカリズムとサンタの遠藤憲一と斉藤由貴のコメントみたいなものが入る。遠藤がサンタの苦労を語る感じは面白かった。まあ、なくてもいいのだが、遠藤もよくこういう役を引き受けますよね。バカリズムとのご縁ですかね。「地獄の花園」もなかなかエグい役で付き合ってましたものね。
第1話 「野崎さんの夢」
今回の3話の中で、これだけがバカリズムの脚本。まあ、自己承認欲求という命題に対し、ある意味、クラスの人気者を笑い飛ばすような感じが面白くあり、現在、ここでの森七菜と同じ境遇にある女子がこれを見るとどう思うかも興味深い作品。とはいえ、このドラマ、森七菜が主演としているが、それをほめ殺しするように弄る小野梨花の方が目立ってることは確か。女優としても、彼女の方が将来性はあると思う。昨年は、「罠の戦争」で結構シリアスな芝居ができることも見せていましたものね。で、この話、森が希望通りに東京の芸能事務所に入って、破れて地方に帰ってきて今に至るという、面白くないラスト。もう一捻り欲しかったが、まあ、「自己承認欲求」というのはないと夢は叶わないし、それが全てでもないという話ですね。
第2話 「れんあいそうかんず」
脚本は左子光晴と上田誠。主演、滝藤賢一が娘のノートの書いてあった男女関係の図を見てしまったために、気になって色々と手につかなくなる話。娘の教育とかにはあまり興味はないようだが、こういう子供の恋愛模様が気になる男親の気持ちはわからないではない。しかし、彼女、毎日のように恋愛の相関図が変わっていくのを観察してるわけでなかなかの強者である。この相関図に釣られるように、実際の子供を見に行こうと、有給までとって授業参観に出席する滝藤。そして、娘を応援していった先には、相関図に自分が出てくるブラックさ。まあ、このラストは視聴者が勝手に色々想像してください話ではありますが、この話も結構好きでした。
第3話 「デスゲーム」
金沢知樹脚本。いわゆる「ライヤーゲーム」が出てきて以来、よくある貧乏人を集めて金を賭けて戦わせるゲームの話。とはいえ、始まろうとすると、一人が「ルールがよくわからない」と言い出す。これ、見ている方にもよくわからなかった。まあ、そういうドラマは面白くないのが常だというところが肝で書かれたドラマだろう。そして、ゲーム参加者で口論になりだし、「じゃんけん」でいいんじゃないという話になり、主催者に関係なく、勝手にじゃんけん始めて、勝手に金を持っていくというスリリングさもない話になっていく。ゲームはルールを決めたもの勝ちというところなのかもしれないが、この辺りは見ていてそれほど面白くはない。最後に残された主催者の斎藤工と蓮佛美沙子の、途方に暮れた感じが面白いドラマなわけである。結局殺された気持ちになったのは、そのゲームを考えた主催者というオチが作りたかっていうことですかね。
まあ、3話とも、それほど奥行きがあるドラマではないのだが、気晴らしにはなるドラマだった。私は、テレビはゴールデン枠にもっとこういう短いドラマを作るべきだと思う。そして、YouTuberもこの程度のドラマを作っていく人たちが増えるべきだとも思っている。大学の映像研究会みたいなところはネットを発信源に切磋琢磨するべきだったりもしますよね。そうすると、ちょっとエンタメの世界に新しい何かが芽生えてきそうな気はするんですけどね。
バカリズム自体が、そういう現代の映像の刺激になっているのは事実。本当に、彼に朝ドラ書いていただきたいと思ってるのは私だけではないでしょうね。