「Silent(第5話)」人を愛すること、優しくすること、そこに必然を感じること・・・。
先週。湊斗が唐突に「別れよう」と切り出す。そこには、強い嫉妬的なものが含まれているのかと私は思った。だが、この回を見る限りそうではないようだ。というか、「別れの切り出し」を受けて、そのことについて1時間使って、その考察というか、二人の恋愛の心の決着をつけるような流れに、とても震えた。今までもそうだが、本当に心象風景だけを繋いでドラマにしていく感じはある意味天才的。小説なら、こういうのも成立する気はするが、画が連続するドラマの中で、心を見せるような脚本。余計なものを入れることを拒んでいるのか、入れることができないのか?すごく新しい構造に見える。
今回は二人が、フットサルのチームの洗濯物を干しているシーンからはじまる。先週の湊斗の告白シーンなど繰り返すこともなく。だからこそ、自然に繋がっている。そして、二人のこれからの在り方、高校時代の話を、さまざまに語り合う数日間のやり取りが始まる。そこに、それほどの悲壮感がないのが、視聴者にとっては救いなのだが、だからこそ哀しみを感じる。
大体、別れる時に、こんなにも出会いのこととか、思い出話を二人で語るものなのだろうか?そう、二人の会話は波長が合っている。湊斗からしたら、想の登場で、心が高校時代に戻ったということなのだろう。その頃も湊斗は紬を好きだったわけで。そう、想がいなくなったからといって、少しよそ行きみたいな恋愛観は変わらなかったのかもしれない。そして、紬を抱いていても、どこか没頭できないような・・・。そういえば、そういう性的な話はここでは一切出てこないし、画としても見せてはこない。ベッドの上でイチャイチャは、そこは、一線を超えてないスキ的な表現だ。そう、ドラマ自体が、理想の恋愛を語るために、さまざまなものをオブラートに包んで表現してる感じもする。そして、その隠した部分が透けて見えるような表現のうまさ。それを、批判する人も多いだろうが、私的には心地よい。
結局のところ、優しい人たちは恋愛を美しく残したいだけかもしれない。湊斗という人間はそういう人に描かれているし、こういう人は、ドラマにするには弱く見えるのだが、世の中には多くいるような気もする。脚本家は、そういう普通なら描かないような心象を文字にしているのかもしれない。だからこそ、このドラマの愛おしさが出来上がっている。
紬も湊斗もいろんなものを過去にすることで、一つの区切りみたいなものは感じているのかもしれないが、この静かな別れは先の激しいカオスのための静けさにも感じる。そこのところは興味深い今回だった。
そして、最後にまた紬は想に新しい気持ちで対峙する。湊斗に言われたように、一度ポニーテールに髪を束ねてみたりすることで、やはり奥底にある想への思いが明確なこともわかる。まあ、それが明確でなかったら湊斗が別れると言ったことに、もっと荒れるだろう。
想の書いていたノートの言葉は、三人が高校時代の関係に戻されたことを意味しているのかもしれない。「言葉」というものが、強いパワーを持っていることをこのドラマはもっと表現として示していっていいと思う。そう、沈黙の中で恋する人の波長が合っていくということは、「言葉」という記憶の先にあることが私は多いと思うから・・・。