「TOKYO MER〜隅田川ミッション~」映画版に期待を持たすスペシャル版
2022年に放送されたこのドラマ。その後の日曜劇場と比較しても、金をかけてそれなりのまとまりを感じさせるエンタメとしてよくできていたと思っている。そして、映画版が二週間後に公開ということで、そのプロモートを含めてこのスペシャルの放送。映画を宣伝するためとはいえ、映画とは全く違う舞台で、かなりしっかりとした脚本で作られていた。そして、レギュラー出演者のチームワークも実にいいのだろう。そういう空気感もわかる作品に仕上がっていた。これを見たら、映画版はかなり楽しみになる。
このスペシャルは、TV放送のストーリーの半年後。セカンドドクターである賀来賢人が厚労省に戻ることになり、その後任をどうするか?とする話から。それなりに結果を出してきたプロジェクトに、病院内から誰も手が上がらないというのは、少し考えにくい気もするが、それくらい異質な医療現場ということなのだろうか・・。そして、結果的に賀来を率い継ぐこととなる中条あゆみにスポットが当てられていくのはわかりやすい脚本。中条の演技もなかなか良かった。
今回のメインの災害は、題名通り、隅田川の屋形船での火災で多くの重症者が出たというもの。船のエンジンが止められずに、走行したままでの救助活動というのがまずかなりの危うさを感じさせる。橋桁にぶつかりそうになったり、そして、船自体が爆発の危険があったり、そんな船の中の救助活動はモニターを使ってのトリアージから始まる。ここまでのことがこれで判断できるのか?という感じはするし、ここまでモニターを個人個人にしっかり向けられるか?というのも感じるが、現代の機器のおかげでここまでできれば結果はかなり違うだろう。あくまでも、ここに存在するのはスーパードクターである鈴木亮平とそのチームだ。彼をそう見せる脚本であり、それは相変わらず成功している。
そして、その足を引っ張るのか?という役が、新しく厚労省から派遣されてきた伊藤淳史。医者の現場でも厚労省でもポンコツと言われてきた医師である。彼が医療現場にいると「チーム・バチスタシリーズ」を思い出したりもするが、ここでは、その彼を使ってこのチームを解体させようとする厚労大臣の鴻上 尚史が目立つように出てくる。災害時にこういう邪魔をしようとしたり、失敗することをニコニコしながら待つような閣僚がいるとは思わないが、そういうのもありに思えてしまう現状の内閣であることは確かだと思う。しかし劇作家である彼であるが、芝居は下手ですよね。あまり、そういうのは見たくない。
伊藤は、自分が手術がまともにできないことがバレても、挫けずにバイクで中条を現場まで送ったり、雑用を進んでやって、現場に貢献していく姿はできすぎだと思ったら、最後には鴻上の悪事を暴露し大臣を辞めさせるという大仕事までする。なかなかヒーローであった。出来過ぎなキャラですけど、伊藤淳史に悪いことはできないみたいな流れですかね・・。
で、今回フューチャーされた、中条のベストシーンは、橋から屋形船の飛び降りるところでしょうね。スタントを使っているとはいえ、緊迫感は出てましたし、彼女が屋形船で鈴木と一緒に自分の患者を助けるところの必死な感じはなかなかリアル感がありました。まあ、災害時の構図の取り方、カット割、音楽の挿入で迫力を出すやり方は、このスタッフはなかなかうまくまとめ上げられるようで、安心して見てられる感じです。やはり、アクションシーンがまとまってると、こういうドラマは安定しますよね。
ラストは、それから1年半がすぎ。賀来賢人が関わって、国が牽引する「横浜MER」の車が完成したところで終わる。その横浜の新たなチームと鈴木たちのチームが対峙して一緒に災害現場で動くのが映画のようだ。予告編を見ていると、ランドマークタワーの火災で「タワーリングインフェルノ」のようだが、ある意味それを超えるような人間ドラマを期待していたりもする。このスペシャルを見ても、黒岩勉の脚本のキレは悪くない。ぜひ、劇場で見て唸るようなものをお願いしたいと思います。
あと、ここでの都知事役の石田ゆり子はなかなか良いと思っています。本当にリアルな百合子は全く認めていない私ですけどね・・。