「エターナルズ」地球に住む我々も故郷などないかも知れないと思ったりする哲学的ヒーロー劇
マーベル映画の戦隊モノである。ただ、監督が「ノマドランド」でアカデミー賞を取ったクロエ・ジャオだということで観たいと思った部分が大。「ノマドランド」をみる限り、こういうエンターテインメント的なアクション活劇が浮かんでこなかったからだ。
内容は、ネットで結構書かれているが、確かに石ノ森章太郎、サイボーグ009みたいなものを想像する感じ。最初のシーンはメソポタミヤ文明の時代。そこから現在まで宇宙からやってきて地球を守り続けているのが、エターナルズということ。その壮大な世界は日本の漫画でのSFが好きそうな題材だ。そして、彼らは故郷に帰ることを夢見ているが、さすがに長いこと地球にいて、その世界も人間も好きになってしまっているという構図。まあ、ウルトラマンなんかも似たようなもので、何故か宇宙人は人間が好きみたいな話。
話的には、遠い昔に滅ぼしたはずの敵が、再度生まれてきて、地球の人間たちを襲う。それを再度防ぐために、ずーっと彼らエターナルズは地球に止まっていたということらしい。そう、アクションだけでは、その辺りを解説しきれないので、思う以上に能書きが多い。その辺りは、やはり社会派の監督が描いたSF大作というところなのだろう。
メンバーにアジア系の顔をした方が多いのはやはり監督の意向?男女比としたらやはり男が多いが、女たちが男と同等に強い感じは昔とは違うグループのような気がした。日本の戦隊モノもそろそろ、こういう形になってきそうな気がしますよね。
ただ、個々の能力についてもう少しマンガチックに説明してくれてもいい気がする。ちょっとわかりにくい。2時間半見てから理解するみたいな部分が多いのだ。そして、ほぼ全編が生アクションというよりはCGアクションであり、そのあたりのうまさは感じるが、どうも有機的な映画ではない。
途中、私の好きな「THE END OF THE WORLD」が流れるシーンがある。まさに、この世の終わりの映画なのだなとは思うが、この曲が流れるような映画ではないだろうと思ったりもした。そういう、なんかチグハグな場面も多い。でも、そういうのがマーベル映画だといえばそうなのだ。
そして、オチ的なものとして、彼らは人工的に作られたもので、故郷などない存在だということがわかる。まあ、不老不死のサイボーグ的なものなのだろう。だから、子供のままの戦士は成長をするために人間になりたいと思う。この辺りも、手塚、石ノ森世界の引用なのかもしれない。そういう点では日本人ウケする題材なのだが、先にも書いたように、どうもいまいち全体としてチグハグ感もあったりする。過去を説明するために、時間が何度か後ろにもどうわけだが、そこでのやりとりが私には眠かったりした。そう、映画的なクライマックスへ進む勢いがそういう部分で削がれるのだ。そして、戦士たちの会話のやり取りが多すぎる気もした。この辺りは監督の地球に対する歴史観を語りたい感じもするが、言語の問題もあり、私にはかったるい感じがした。
それなりに壮大な終わり方をして、また続編も匂わせる、いや、続編は必ずあるのだろうなと思う。まあ、「サイボーグ009」にしても、どんどん訳のわからぬ方向に進んでいった感があるので、それでいいのかなとも思う。でも、私的にはもう少しシンプルな感じがいいとは思うのですよね。