「グレイトギフト(第9話)」"ギフト”の恐ろしさは殺傷力ではなく、人の欲望を掻き立てる魔力
「"ギフト”の恐ろしさは殺傷力ではなく、人の欲望を掻き立てる魔力」と反町隆史はまとめているが、他人が空気のようにいなくなれば自分の天下が来るという妄想の中にそれはある。つまり、世界が狭い中で皆は他人を疎んじて消してしまいたいということだ。そして、真犯人がわかると同時に、それは国家の中枢で仕掛けられたミッションとして始まったことがわかる。そして、その球菌の存在を反町が発見したことで、ストーリーが変わっていったという展開。つまり、この話は「ギフト」のサイドストーリーだったりもする。まあ、このストーリーの発端を考えだし、連続ドラマとしてうまく繋げていった黒岩勉は、ある意味、連続ドラマの申し子といえよう。それだけ楽しめるオリジナル作品ではあった。
ただ、結構な部分、科学的にも、人の心理的にも粗い部分が気になったところはあった。そういう意味で、これ、2時間の映画にまとめると奇想天外すぎて面白さに欠けるかとは思う。
最もそう感じるのは、真犯人の小野花梨の描き方である。前回、彼女に「ギフト」の培養のお鉢が回ってくるまで、彼女の描き方が全く雑な感じで、ただ小うるさい波瑠の後輩くらいにしか描けていなかった。真犯人なら、それを匂わす表情とかの伏線も欲しかったし、ミッションの中心にいたはずの坂東彌十郎が亡くなったり同僚の病理医が亡くなったところでストーリーが書き換えられてることがわかるわけで、この辺りで彼女の変調くらいは見せておいた方が良かったのではないか?それは、真犯人探しをわからなくするためにあえて描いてないということなのかもしれないが、それがドラマの深みをしっかり演出していなかった感じにも見える。
そして、その小野花梨、昨年の今頃は「罠の戦争」でキレのいい政治家秘書の演技を披露していたが、ここでの演技は全くもって雑である。まあ、人間性が壊れている役なのかもしれないが、もう少し、「現代にこういう女もいるよね」と思わせるキャラを強く感じさせる黒い演技が欲しかった。そして、なんか女優として見た目が浮腫んでる感じがしたし、肌のお手入れもできていない。いろんなものが、この役とシンクロした感じに見えて惨めったらしかった。女優として、しっかりした姿を見せていただける日を楽しみにしております。
で、今回のサプライズは、真犯人と手を組んで皇帝になりきった佐々木蔵之介が、津田健次郎の妻の西原亜希をギフトで殺してしまったこと。まあ、突然、派手目な雰囲気で出てきた彼女だが、こうなるために派手だったのがわかる。そして、これで妻と愛人を殺された津田が佐々木に反旗を翻す理由ができたということだろう。尾上松也の葛藤や、筒井道隆のどうでもいい恋心よりも、津田の心が揺れたことが解決につながるという流れは上手い作りだとは思った。だが、それも最後まで本音が見えてこない感じがうまかったと言える。
ある意味、「誰でも証拠なく消せる薬」は「不老不死の薬」と同義語的なものなのかもしれない。何にでも効くこの2つがあれば、もはや医者はいらないのだから・・・。最後に尾上松也の娘のオペを逮捕される佐々木がやるという流れはかなりのリスクを感じるようには見える。だが、佐々木がそれをやり抜くというのは、医者の技術は、技術なのだ。そこに愛の力はあるかもしれないが、簡単に人を殺せる人でも技術があれば人を救える。それが医者だとも言える。
そう考えれば、毎晩、人殺しを稼業にする男が名医だったみたいな話も面白いかもしれない。医者は世の中のスーパーヒーローではないと言い切るようなドラマはそれなりに必要な時代ではあると思う。
そんな、欲望にただ感化され、テンション上げていく人たちに中で、なんとか自分を保ちながら、コトを終わらせた反町の今までになかった演技は印象的だったし、このドラマは彼の印象をよくしたと思う。クラブに最後までセーターを着ていく男である。そして、自分の世界でひっそり暮らしたいと思う男、何か、別にそんな男の役を与えて、じっくりと演技する彼を見たいものだと思った。
ラスト、球菌はどこかに閉じ込められた模様。そこには女王様が存在するようだ。そう、秘薬が産まれてしまったら、この世からそれが亡くなるなどということはかなりの確率で難しいだろう。欲望の人間社会を有無を言わさず動かす秘薬。プーチンならいくらで買うのでしょうか?
本当に、胡散臭い話である。