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「アイのない恋人たち」現代の中年にさしかかる若者像を真正面に捉えるドラマか?

テレ朝、日曜10時のこのドラマ枠、4作品目。岡田惠和、野島伸司、浅野妙子と続いて、今回は遊川和彦のオリジナリ脚本。この枠は上質なオリジナルドラマを届けるコンセプトで作られていて、私は好きな時間帯だが、視聴率はなかなか厳しいようだ。この時間の前に「大河ドラマ」「日曜劇場」みたいなディナータイムがあり、お腹いっぱいになったところでここでドラマを見るのはなかなか辛いところもありますよね。なかなかリアルタイムでは見てもらえない時間だが、良い作品が続いてるので残してほしいドラマ枠ではある。

そして、今回は遊川和彦脚本と聞き、それなりの変化球が飛んでくるのかなと思って初回を見たら、意外に直球の青春恋愛劇なので驚いた。キャストも皆、はまっているし、多くのこの世代の人々に見てもらいたいと思えるドラマではある。ただ、恋愛経験も少ない中年が、その事象に振り回されて幸せが掴めるかどうか?という話らしく、幸せに人生を順風満帆に暮らす若者には「暗い話」と感じられるかもしれない。

主人公の一人が、脚本家志望で売れないままという設定は、昔からよくあるが、年齢的には昔より5歳くらい上の話になっているところが、今のリアルを掴もうとしている感じはする。研究職であろう本郷奏多が、恋愛自体に興味がなかったりしているのも昔以上にありそうな話だし、女性の主役であろう、岡崎紗絵が、兄に問題を抱え、親にも処女扱いされるような感じも、リアルに感じる人も多いだろう。ある意味、脚本家は、現代にそれなりに存在する若者たちをドラマに投じて、現代の心の疫病みたいなものを表現しようとしたいのかもしれない。そういう意味では、合コンよりもマッチングアプリであるということなのか?そんな描き方は、70年代のATG映画的な青春劇を今に持ってきたらどうなるだろう的な臭いもする。そこが、今の若者(といってもアラサー世代だが)にどう受け取られるかは興味深い気もするが、そんな若者たちにすごく見てほしいドラマである。

前田公輝が警官で、区役所に勤める深川麻衣と最初に対峙する感じは、やはり、類は友を呼ぶということで、公務員という世界がそれなりに閉鎖的なことを表そうとしているのか?というか、普通に民間の不安定な人々と交わっていると、そういう人との接点はほぼないですものね。そんな、世界が少しズレてく方がドラマになりそうだが、ここではそういう方向にドラマを進める気はないのかもしれない。

色々な人々が出てくるが、主人公の福士蒼汰の役が脚本家だということは、遊川の私小説的世界もあるのかもしれない。そこに、世の中の免疫があまりできていないような岡崎紗絵がどう絡んでくのかと思ったら、初回から、脚本を誉めながらも、突然キスされそうになり、最低の男と罵る展開。ある意味、お互いの心がどう溶け合っていくかを面白く描きたいというところか・・・。

岡崎紗絵は、久々に、映画「Mellow」の時のような雰囲気で、私的にはとても芝居が楽しみである。こういう感じが彼女一番綺麗に見える。メガネもいいですね。

とにかく青春劇はいつの時代もその世代の心に残るものであってほしい。遊川はもう68歳になるのだが、混沌とした時代の中の青春像をどう描くかお手並み拝見である・・・。

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