見出し画像

「海に眠るダイヤモンド(第9話)」恋は時空を超えて実るという美しさをどう表現するか?ですよね

どうやって最後の2時間でこのドラマをまとめるのか?あまり予想がつかなかったが、まあ、いろいろこちらの思いもつかぬ方向に話を持っていって、最後は杉咲花を愛していた神木隆之介の気持ちを、彼が植えたコスモスと、宮本信子も見ることが叶わなかったギヤマンの花瓶に託し、実に綺麗な恋物語として昇華していた。こういうナイーブな感性は女性の作り手だからできた気はする。

最後に、神木隆之介が、池田エライザと兄の息子を守るために、全ては自分の責任としてヤクザに追われながら日本を放浪していたという話も、なかなか男には考えられない筋書き。男は兎角、男自身を女々しくしか書けないものなのだ。そして、このドラマの主役は端島で生きた女たちなんだということなのだろう。

どういう経緯で野木亜紀子氏が端島の話を書こうと思ったのかは知らないが、私的に見て、この島で起こったような生きてきた土地を追われるようなこと、人生を一つのところ一つの職業で終わるような人生が時代からなくなってきたこと、そういうところで、この島のあったこと、そこで起こったことが今生きる人たちに何かの問いかけになればとつくられたドラマのようにも見えた。そう、時代は、令和の今、かなり移ろいやすい感じだが、人は前にしか進めない。そして、そこに昔の縁がするりと戻ってきたりもする。ホストの神木隆之介はそういう存在だったのだろう。そして、見ている私たちは、その神木が端島と何らかの関係があるものだと思って見ていたわけだが、それは見事に裏切られた。そして、昔の8mmを見ながら、「似てないね」と神木自身に言わせるのがオチだとは、なかなか可愛い流れだと思った。

そんな最終回、まず、驚かされたのが、宮本の秘書である酒向芳が、斎藤工と池田エライザの息子だったということ。まあ、背の高さは似ているが、池田にも斎藤にも似ていないだろう!とツッコミを入れたくなった。多分、池田の父親似なのかもしれない。まあ、彼をそんな重要人物だとは思わなかったものね。

そして、神木の日記が、清水尋也と土屋太鳳の息子である滝堂賢一が宮本信子に戻したものだとわかる。その11冊目を隠していたのが酒向であったとは・・。そして、池田を守って神木が島から離れたことがわかり、そこから清水に会うことがあっても、杉咲に会うことはなかった流れがわかり、杉咲がそれで前原瑞樹と結婚し東京に来た流れもわかる。

まずは、神木が清水に日記を渡すまでのシーンがなかなか良かった。というか、清水のこれほど強い口調の芝居を見たことがなかったので驚いた。この、神木と言い合うシーンは、お互いのことを思ってのシーンであり、神木の思いもここで強く伝わってくるシーンになっていた。

そして、端島の閉山で、10歳くらい歳をとった出演者たちの芝居がお見事でした。そして、少し歳をとったことと、未来に大きな不安がある感じがすごく良くできていた。こういう細かい演出がこのドラマの力強さになっていたということだ。

そして、最終回も中嶋朋子の演技が素晴らしかった。端島を離れ、池田と孫と暮らせるようになったという経緯は安心できるし、そこに彼女がいることで池田も安心して暮らせたのだろうということが読み取れる。でも、そこから酒向はやはりシンクロしてこないよねw

後半は、宮本信子のモヤモヤした気持ちを晴らすために、今の端島に向かう二人を描く。瓦礫となった本物の端島はやはり訴えかけるものが大きい。そして、今回はドラマの中でつくられたセットが素晴らしかたっため、その瓦礫の意味を強く感じるわけだ。日本の高度成長の中で朽ちた場所であるが、時代というのは、そういう瓦礫を実際にも、心の中にも残しながら過ぎていく。その整理をうまくつけたものが未来を掴むのも人生なのだと思う。

杉咲に渡すために神木が作ったギヤマンの話に涙し、その後に神木が最後にいた場所にコスモスの花を見つけ、その向こうに見える端島の姿がある。よくこんなロケーションのところがあったなとも思うが、まあ、普通に涙腺崩壊の場面であった。

そして、ホストだった神木は、端島にいた神木と同じく全国を周り歩く仕事に就こうとする。それも縁である。

ラスト、宮本信子が妄想の中で、昔の端島の中にいて、皆がそこで生き生きと暮らす中で、杉咲花と対峙するシーン。綺麗に収まっていましたね。そう、心の中では住んだ場所の記憶は朽ちないのだ。とにかくも、そんな人生の縁と偶然と奇跡の中で、記憶はまた別のものとして生き続ける。

スタッフ、キャストの皆様、お疲れ様でした。そしてありがとうございました。端島を舞台によく、このドラマをまとめてくださいました。そして、このドラマを今年の暮れに見られたことで、来年も頑張って生きなきゃとおもったりもしました。

今年最後に、本当に良きドラマを見ることができました。再度、ありがとうございました。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集