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2022年新作映画レビュー

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2022年に見た新作映画のレビューです。
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2022年12月の記事一覧

2022年映画決算

とりあえず、今、映画館はそこそこの活気を取り戻している。日本の映画興行は、アニメに助けられている状況ではあるが、3年ぶりに途中に臨時閉館ということもなく、1年、映画館を開くことができたわけである。そんな中、シネコンはともかく、ミニシアターの営業自体はなかなかギリギリの状況の中で行われている状態は変わらないと思う。飯田橋ギンレイホールが、移転をするという前提ではあれ、閉館したことで、東京の名画座が、半世紀前と同じところに存在するのは、早稲田松竹くらいだと思われる。まあ、封切館で

「Dr.コトー診療所」離島の医師がスーパーマンである必要があるのか・・・?

何故、ここで映画版を作るのか?という疑問はあった。そして、映画は最終章を迎えるのかとさえ思わせながら、最後は皆が幸せな暮らしに戻っているというストーリー。そのラストの今ひとつわかりにく提示の仕方をどう捉えるかは、観客の意思に任された感はあるが・・。この興行が当たれば、映画でシリーズ存続というのも考えているのだろうかとも思う。 映画自体は、いくつかのドラマを合わせながら、なかなか感動的にDr.コトーの無理なワンオペ診療を感動的に見せていく。それにより、命の大切さ、人を思うこと

「月の満ち欠け」前世の記憶が残るということが必要なのか?と色々考える・・・。

年末、廣木隆一監督映画祭3本目。結果的には、3本とも飛び抜けた作品には出会えなかった感じだが、どれが一番好きか?と問われればこの映画ですかね?でも、魂の輪廻の失敗みたいな出来事であった、ファンタジーというよりは、オカルト的な雰囲気が強い感じではある。そして、こういう映画は受け入れられない人は、全くダメだろう。制作者が何を求めてこの佐藤正午の原作を映画化しようとしたのか、もう一つ掴み切らなかった感じはある。 初頭で大泉洋の家族の話が語られ、彼の妻の柴咲コウと娘が亡くなったとい

「ケイコ 目を澄まして」16mmフィルムに焼き付けられた画と空気感とそこから広がる世界への疑念。

この映画は16mmフィルムで撮られたそうだ。それなりに画質は粗いが、昨今のデジタル技術は、それを違和感なく映画館のスクリーンに映し出す。映画がフィルムのみで上映されていた時代は、16mmを35mmにブローアップして上映することはあったが、その画質は映画館で見るとやはり安っぽく映ったし、観ていて疲れた。まあ、今、16mmで撮ることに意味があるかどうかは置いておいて、その映像から醸し出す空気感はなかなか硬質であり、昭和の臭いのするものに仕上がっていた。 だいたいボクシングを主題

「ラーゲリより愛を込めて」何故今この題材かというよりは、今だからこの題材ということだろう。戦争は人を人でなくす行為だということ。

2022年は戦後77年目である。つまり、後期高齢者でも、戦争を知らない老人がいるということ。いや「戦争を知らない子どもたち」と歌っていた世代が「戦争を知らない老人」になったということだ。そう、戦争など知らない方がいい。世界に地球に戦争などという行為はいらないというのが、私のスタンスだが、ウクライナではまだ戦闘状態。日本も防衛費を倍にするとか言い出す始末。現首相はキチガイであると私は確定する。反撃するというのは、戦争を容認するということだ。全て、国会で議論もせず、閣議決定などと

「母性」女には、母と娘の2種類があるというところで唸るものが欲しかったですね

2022年末、廣木隆一映画祭(私はそう思っている)の2本目。湊かなえ原作の映画化。と考えると、少しシュールな感じの話、そして映画かと思った。予告編はそんな感じで作ってある。が、舞台が昭和なこともあるが。(これ、全然、映画の中で説明がないが、家に置いてあるテレビや、携帯が一切出てこないのでそうなのだ)どちらかというば、古臭い話を湊かなえ的に料理した小説なのだろう。戸田恵梨香と高畑淳子の関係など、昭和の嫁いじめドラマですものね。そこんところを監督がどのように料理するかが映画を見る