走鹿

短めの創作小説・シナリオ置き場。🖊カクカタチ「2000字のドラマ」入賞 📩連絡先: rundeer.888@gmail.com もしくは TwitterDMまで

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最近の記事

「隣の救世主」第3話

授業の途中、後ろから教室に入る。 何となく物音を立てないようにしていたが、教壇に立つ葉山先生と目が合った。 幸い何も言われずに自分の席まで辿り着いたのだが、八谷さんは見逃してくれず、机ごと寄せながら小声で話しかけてくる。 「ねえ、どこ行ってたの」 「ちょっと」 「今朝から頭がおかしくなって保健室とか運ばれたのかと思って心配しちゃった」 「……至って健康です」 「八谷、何やってるんだ」 「どこまで進んだか教えてあげてました」 「……それならいい」 葉山先生の目をうまく切り抜けた

    • 「隣の救世主」第2話

      本鈴が鳴ったのとほぼ同時、前につんのめるようにして教室に滑り込んだ。 続いて呆れ顔の葉山先生が前から教室に入ってくる。 「栗田、もうちょっと時間に余裕持てよ」 「すいません」 まだ騒がしい教室内で、ぜえぜえと息を荒げる俺。山添は涼しい顔でいつの間にか窓の縁に腰掛けている。 それは山添の身体能力が高いからなのか、それとも生身の人間とは違う特殊な力が働いているからなのか。 どちらにせよ、何かズルいなぁと思った。 「間に合いましたね」 「うん」 「2年の教室って、1年よりちょっと大

      • 「隣の救世主」第1話

        電車に揺られながら、イヤホンでお気に入りのプレイリストを聞く。 そうすると、頭のネジがゆるみはじめて意識がふわふわと溶けるような感覚になる。 今日も、会いたくもない人と会い、話したくもないのに話して、笑いたくもないのに笑った一日だった。 チャイムが鳴るのとほぼ同時、誰よりも早く学校という社会から抜け出して、こうやって一人電車に揺られていると体の表面に張った薄い鎧がばらばらと剥がれ落ちる。 そうすると、やっと自分自身を取り戻せるような気がした。 いつものように心地よい揺れに意

        • #2000字のドラマ「救世主」の漫画とMVが公開されました

          昨年、投稿コンテスト「#2000字のドラマ」で、数ある素晴らしい作品の中から私が書いた「救世主」が入賞させていただきました。 正直な気持ちとしては、「ワァ……生きてるとこんなこともあるんだ……」といったような感じで、大変ありがたく思っております。 見つけてくださった審査員の方々、ありがとうございます。 そして4/13、ついに漫画化+MV化された映像がYouTubeなどで公開になりました。 まず先に、ますだみくさんが描かれた漫画をTwitterから拝見しまして、原案を自分

          トップシーン脚本大賞、ひとつピックアップしていただきました🥹ありがたい 残念ながら賞は逃してしまいましたが、萩原恵礼先生に講評していただき嬉しかったです!

          トップシーン脚本大賞、ひとつピックアップしていただきました🥹ありがたい 残念ながら賞は逃してしまいましたが、萩原恵礼先生に講評していただき嬉しかったです!

          2021年はたくさん貴重な経験をさせていただきました。ありがとうございました! 2022年もマイペースに創作活動を続けてまいりますので、よろしくお願いいたします😃🎍

          2021年はたくさん貴重な経験をさせていただきました。ありがとうございました! 2022年もマイペースに創作活動を続けてまいりますので、よろしくお願いいたします😃🎍

          #2000字のドラマ で数多くの素晴らしい作品の中から「救世主」を入賞作品として選んでいただきました。🙏 ありがとうございました!そして今後ともよろしくお願いいたします🦌

          #2000字のドラマ で数多くの素晴らしい作品の中から「救世主」を入賞作品として選んでいただきました。🙏 ありがとうございました!そして今後ともよろしくお願いいたします🦌

          救世主

          電車に揺られ、イヤホンから聞こえるお気に入りのプレイリストに意識がふわふわと溶けていく。 今日も一日、社会生活をよく頑張った。会いたくない人とも会い、話したくもないのに話し、笑いたくもないのに笑った一日だった。 18時になったと同時に誰よりも早く学校という小さな社会から抜け出し、こうして一人で電車に揺られている時間が好きだ。 心地よい揺れに意識を手放そうとした、その時。大きな衝撃音とともに、鼓膜をつんざくようなブレーキ音が響き渡った。 人身事故らしい。 電車内の電気が消え、

          救世主