心療内科と精神科の違いご存じですか?
看護学生時代、精神科は病気を診るより人を診る、最も難しい領域であると感じたと同時に、勉強していて最も興味が湧く分野でした。
ある日、精神科の教授が言いました。「みんな心を病んだ人は、精神科に行くっていうから病院に行きづらい、心療内科に行けばいい」そんなことを言いました。
今回のテーマは心療内科と精神科の違いについて述べていこうと思います。心療内科と精神科の違いについて理解することは、健康問題に対する正しい診療科を選ぶために重要です。心の不調を感じたとき、どちらに行けばよいのか迷うことがあるかもしれません。この記事では、両者の違いについて詳しく解説し、それぞれがどのような症状に対応するのか、またどんな患者さんが受診するべきなのかについてわかりやすく説明します。
1. 心療内科とは?🏥
心療内科は、心の問題が体の症状として現れる場合に対応する診療科です。主に、ストレスや不安が体に影響を与え、腹痛や頭痛、動悸などの症状が続くときに診察を受けることが推奨されます。身体の検査をしても異常が見つからないが、症状が改善しないという場合に、この科での治療が効果を発揮します。
心療内科が対応する主な症状
慢性的な頭痛や腹痛🤕
動悸や息切れ💓⚡
めまいや倦怠感💫
過敏性腸症候群(IBS)💩
これらの症状は、身体の機能異常ではなく、心理的要因が大きく影響しているため、単なる薬物治療ではなく、カウンセリングやストレスマネジメントが併用されることが一般的です。
心療内科の治療方法
カウンセリング:心のケアを行い、ストレスの原因を探ります。
認知行動療法:思考のパターンを見直し、ストレスに対処する力を養います。
薬物療法:不安やストレスを和らげるための薬を処方される場合もあります。
2. 精神科とは?
精神科は、心そのものの病気や脳の機能異常に対応する診療科です。うつ病、不安障害、統合失調症など、精神的な疾患に対して専門的な治療を提供します。これらの病気は、脳の化学バランスの崩れや、感情のコントロールができなくなることが原因で起こることが多く、薬物療法や心理療法が中心的な治療法となります。
精神科が対応する症状や疾患
うつ病😔:強い落ち込みや意欲の低下が続く状態。
不安障害😰:過剰な心配や緊張が日常生活に支障をきたす。
パニック障害😱:突然の強い不安や恐怖感が、動悸や息切れとともに現れる。
統合失調症🤦♀️:現実と向き合う力が低下し、幻覚や妄想が生じる。日本で100人に1人弱は統合失調症患者と言われている。
精神科では、これらの症状に対して薬を使って脳の働きを安定させることが多いですが、症状によってはカウンセリングや認知行動療法を組み合わせて治療が進められることもあります。
3. 心療内科と精神科の違い
両者の違いは、治療対象となる症状の性質にあります。心療内科は、心の問題が体の症状として現れる場合に対応し、体の症状をケアしながら心のケアを行います。一方で、精神科は、心や脳の機能に直接影響する精神的な病気を専門に治療します。
心療内科🏥:体の不調(例えば、腹痛や頭痛)が、心理的な問題によって引き起こされている場合に適しています。
精神科🧠:うつ病や不安障害など、脳の機能に関わる心の病に対応します。
《心療内科が向いているケース》
身体的な検査で異常がないにもかかわらず、体調不良が続く場合。
ストレスや不安によって、日常的に体に症状が出ている場合。
《精神科が向いているケース》
気分の落ち込みや不安感が強く、日常生活に支障をきたしている場合。
心の病気が原因で、現実感を失ったり、情緒不安定な状態が続いている場合。
4. どちらを受診すべき?
自分の症状にどちらの診療科が適しているかを判断するのは難しいことがあります。以下のポイントを参考に、どちらを受診すべきか考えてみましょう。
身体の症状が強いが、心の問題が関係していると感じる場合
心療内科へ。例えば、ストレスで胃痛が続いているなど。
気分の浮き沈みや不安が強く、精神的な支障が大きい場合
精神科へ。例えば、気分の落ち込みが日常生活に支障をきたすほどである場合。
どちらに行くべきか迷った場合、まずは体の症状を確認し、必要に応じてかかりつけの医師に相談するのも良いでしょう👌。
教授が言った「精神科の偏見は消えない」
みなさん精神科、精神病のイメージはどのようなものでしょうか。「怖い」「精神病の人に近づいたら危なそう」そんなイメージを持つ方が多いのではないでしょうか?
1964年、米国駐日大使ライシャワー氏が、19歳の日本人青年に右大腿部を刺され、輸血するほどの重傷を負ったライシャワー事件が起きました。刺した犯人には精神科通院歴があり、この事件は日本の精神保健福祉に大きな影響を与えることになりました。
また、統合失調症の病気では、幻覚や幻聴の症状に悩まされることで、自傷他害の事件が起きている事実があります。
わたしは、みなさんに精神科に通っている人、精神科の病気を持つ人を敵視してほしくないです。統合失調症患者であれば、症状が本人の性格を変えており、本来の本人の姿とは異なります。幻覚で毎日24時間誰かに見張られていたり、幻聴で毎日「死ね」などど言われ続ければ誰もが気が気でいられなくなると思います。
昔から根づいた精神科へのバイアスを取り除くことは難しいです。ですが、この記事が少しでも多くの方の目にとまり、精神科や精神病について知ってもらえたら幸いです。
身近な人がつらそうな場合の受診の促し方
心の病気には自覚症状がある場合と、自覚症状がなく、家族や周りの人が先に気づく変化があります。
「疲れた」という言葉を繰り返している、前まで朝には起きていたのに、昼頃まで起きれなくなって生活リズムが崩れている、服装に無頓着になる、急に自信家になる(誇大妄想などがみられる)、幻聴や幻覚の症状が出現するなど、行動の変化に現れると、ご家族や周りの人から見ると怠けているように思われたり、性格が変化したように感じられるかもしれませんが、もしかしたらその背景に身体疾患や精神疾患が隠れている可能性があります。
そのような人が家族や友人の中にいる場合に「いつもと違って様子がおかしい。病気だと思うから精神科か心療内科を受診しよう」というと、自分はどこも悪くない、気のせいだと病院へ行きたがらないのが普通です。ですので、「おかしいから」「あなたは病気だ」と言わず、「あなたが心配だから念のため病院に行ってみよう」と優しく言葉をかけてあげるといいと思います。
心や体の不調があれば、当事者である本人が一番不安を感じているはずです。ご家族や同僚など身近な方が付き添って早めに受診することで、早期治療につなげることができます。
ここで注意していただきたいことが、統合失調症の薬物治療についてです。
統合失調症は薬物療法で症状をコントロールできる病気です。しかし、どんなに症状が落ち着いていても、決して薬を自己中断したり、薬を断つことをすすめないでください。症状が落ち着いているのは薬を飲み続けているからこその結果です。どうか安易に薬を断つようなことだけは避けて下さい。
5. 専門用語の簡単解説
心療内科:心の問題が原因で体の不調が現れる場合に治療を行う科。
精神科:心の病気や脳の機能障害を治療する専門科。
うつ病:長期間の気分の落ち込みや意欲の低下を特徴とする心の病。
不安障害:過剰な不安や心配が続き、日常生活に支障をきたす状態。
パニック障害:突然の強い不安や恐怖感が体に影響を与える病気。
6. まとめ
心療内科は、体の症状が心の問題から来ているときに適している。
精神科は、心そのものや脳の機能に問題がある場合に受診する。
身体的な不調がメインなら心療内科、精神的な不調がメインなら精神科。
迷ったときは、体の症状と精神の状態を整理して考える。