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夕立のプールの後で

「家、すぐ近くなんだ。良ければこの後、寄って行かないか?」
プールで話しかけられた。こちらの人が集まるプール。珍しいことではない。
夏の終わり、一日の終わり、泳いでいて夕立に見舞われた。

ゲリラ豪雨? 最近日本が亜熱帯になったような
雨の降り方をするようになった。帰り出す人もいたが、
どうせシャワーも更衣室も大渋滞。30分もしないで止むだろうと判断し、
プールサイドの屋根があるチェアに腰掛けた。

プールから上がるようアナウンスがあったのでプールサイドのチェアも
人でいっぱい。僕の隣には、僕と同じような競泳パンツを穿いた紳士が座った。
紳士、勝手に呼んでいるが、そう。僕より年上で、顎髭がある。
「いい仕事して、いい暮らししいているんだろうな」という佇まい。

このご時世、このプールでもブーメラン型の競泳パンツを穿く人は少なくなり、
穿いている人も、穿いてプールに来ること自体に価値を見い出しているような
人がほとんどで、それなりに体型をキープしてそれなりに泳げる人は
本当に少なくなった。

この、隣の紳士は、その、数少ない人だった。
ローリングが上手で動きに無駄がない。佇まい同様に優雅に泳ぐ。
泳ぎに好感を抱いた人に、さりげなく声をかけられた。

「えっ、別に、時間はありますけど、いいんですか?」


プールから本当にすぐ、東京タワーがすぐ近くに見えるマンションの高層階が、
紳士の家だった。部屋に通され、「冷たいものでも」と
紳士はシャンパンのボトルとグラスを持って来た。
僕はちょっと警戒したけれど、これまでのそれほど数多くない
こちらの世界での経験から大丈夫と判断し、シャンパンに口をつけた。

よくプールには行くのか? 
泳ぎはどこで習ったのか? 
どんな水着が好きか?
さりげない会話の後、自然の流れで唇を重ねてきた。Uuuuuuuu~。

「競パン穿いて、やろうか?」
「えっ、でも、濡れたままだし…」
「ちょっと待って」
紳士は奥の部屋から、競泳パンツを持って来て、これを穿くよう言った。
赤い、そうだな。ブルゴーニュというよりはボルドーのワインのような濃い赤色。

その後、僕は紳士に巧みに責められ、喘ぎ、快楽に浸った。
競パンの脇から性器を引っ張り出され、責められ喘いでいるよう様子が、
部屋の鏡に映し出された。「こうされるのが、好きなんだろ!」
紳士に耳元で囁かれ、アソコはより屹立し射精した。
射精は一度では済まなかった。疲れ果て、横になっていると、
シャワーを浴びるよう促された。

シャワーから出てくると、紳士は手際良く料理をしていた。肉を焼いていた。
テーブルには、ストックと思われる野菜の煮込みラタトゥイユが器に盛られていた。
バゲットと、ワイングラスも。肉が焼き上がると、
セラーから赤ワインを持って来た。ボルドー、サンテミリオン地区の赤だった。

これから、僕は、この紳士と…。
このサンテミリオンの赤ワインのように、
濃厚ではないけれど味わい深い関係になるのだろうか?
あるいはワイン=醸造酒ならではの、一期一会の関係になるのか?

どうでもいいのだろう。きっと。そんなことは。
このワインの味のように、今が愉しく幸せならば。
ラ・ヴィ・アン・ローズ!

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