法の下に生きる人間〈第74日〉
ゲノム医療法やクローン人間の話題のほか、遺伝子組換え技術による生態系への影響や、私たちの食の安全への影響は、実は、まだまだ知られていないことが多いのが現状である。
それはやはり、私たち自身が、ふだんの生活でそういった情報に触れることがほとんどないからである。
ただ、国や自治体のホームページでは、それなりに情報公開がされており、現存する法律等も調べれば、すべての条文がインターネット上で掲載されている。
今日は、カルタヘナ法違反で、遺伝子組換えの熱帯魚を飼育・販売して夫婦が逮捕されたニュースから、生物や食品への影響についても考えよう。
まず、カルタヘナって何だ?というところから説明することにしよう。
カルタヘナは、コロンビアの都市名である。
1999年2月に、コロンビアのカルタヘナで「生物多様性条約特別締約国会議」が開催された。いわゆる、生物多様性の保全に関する国際会議である。
その会議の1年後、2000年1月には、カナダのモントリオールにおいて、「生物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書(カルタヘナ議定書)」が採択され、2003年6月に締結国が50か国に達し、同年9月に発効したのである。
日本では、カルタヘナ議定書の採択を受けて、通称・カルタヘナ法が、国会の審議を経て成立した。
カルタヘナ法の正式名称は、「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」であり、2004年2月に施行された。
つまり、法施行から今年でちょうど20年を迎えるのである。
カルタヘナ法は、全48条から成るのだが、この法律は何を規制しているのだろうか。
遺伝子組換え生物を作り出すこと自体は、禁じられていない。
ただし、事前承認を受けることや届出の義務、安全措置の実施や輸出入の際の情報提供など、生物多様性の保全を目的とした細かな手続きが定められている。
熱帯魚の例では、光る熱帯魚がすでに販売されていたが、例えば、それが意図的に海に放出されてしまうと、たちまち海の生態系が乱れてしまう。
本来、光る魚ではないのに、光ってしまうことで外敵に捕食されやすくなり、あっという間に絶滅の危機に瀕することになる。
あるいは、光ること以外にも、何らかの遺伝子情報が組み込まれたのだとしたら、その魚は、他の生物に対してどのような関わり方をするのか、私たちの知らないところで海に放たれてしまったら追跡のしようがない。
こういったことがニュースになってたまたま明るみに出たわけで、実際は氷山の一角であり、届け出もせずに遺伝子組換えの食品が出回っているとしたら、私たちの食の安全さえも脅かす世の中になるかもしれない。いや、すでになっているかもしれない。
続きは、明日である。