唱歌の架け橋(第29回)

10月も明日で終わりだというのに、日中は少し汗ばむほど気温がまだ高めである。

気がついたら、一気に冬に突入しているのだろうか。

北海道の最北端の稚内では、先日、初雪が降ったという。

寒いのが苦手でも、雪の白さや積雪の高さにワクワクする人もいるだろう。

そういうわけで、今日は中田喜直作曲の『雪の降る街を』を紹介しよう。

【1番】
雪の降る街を    雪の降る街を
想い出だけが    通りすぎてゆく
雪の降る街を
遠い国から    おちてくる
この想い出を    この想い出を
いつの日か包まん
あたたかき幸福(しあわせ)の    ほほえみ

【2番】
雪の降る街を    雪の降る街を
足音だけが    追いかけてゆく
雪の降る街を
一人心に    満ちてくる
この哀しみを    この哀しみを
いつの日か解(ほぐ)さん
緑なす春の日の    そよかぜ

【3番】
雪の降る街を    雪の降る街を
息吹とともに    こみあげてくる
雪の降る街を
だれも分らぬ    わが心
この空(むな)しさを    この空しさを
いつの日か祈らん
新しき光ふる    鐘の音(ね)

以上である。

この歌のモデルになった街は、山形県鶴岡市だという。

山形県には、冬にもよくドライブに出かけるが、夜は明かりに照らされた雪が映えるのが、ロマンチックで良い。

ただ、この歌の歌詞は、子どもには理解するのが難しいだろう。

そして、哀しみやむなしさがどういった状況でこみ上げてくるのか、大人もちょっと想像に時間がかかりそうだ。

作詞したのは、内村直也という人である。

内村直也といえば、柔道家のほうを思い浮かべる人もいるかもしれないが、『雪の降る街を』を作詞したのは、劇作家であり翻訳家でもあった人である。

明治末期の1909年に生まれ、元号が昭和から平成に変わった1989年に、80才の誕生日を迎える前に亡くなった。

興味がある人は、彼が携わった作品などを調べてみるとよいだろう。

さあ、明日はいよいよ最終回である。

中田喜直の父である中田章の登場である。

代表曲は、知る人ぞ知るアレである。

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