20世紀の歴史と文学(1984年)

1984年といえば、文学が好きな人は、真っ先に『1984年』というSF小説を思い浮かべるのではないだろうか。

これは、この年に発表されたのではなく、1949年に刊行された。

イギリスの作家であるジョージ・オーウェルが、第三次世界大戦後の世界を描いたものであるが、オセアニアとユーラシアとイースタシアという3つの超大国によって分割統治された近未来の様子が書かれている。

超大国は、核戦争の勝者であり、おそらくはアメリカとソ連と中国が想像される。

また、監視社会の到来も予言していたから、まさに今の世界がそうである。

かろうじて第三次世界大戦は起こらずに済んでいるが、この先はどうなるだろうか。心配ではある。

読んだことがない人は、文庫本が早川書房から出ているので、購入してみると良いだろう。

ノーベル文学賞受賞なるかと毎年ファンをソワソワさせている村上春樹の『1Q84』は、ジョージ・オーウェルの本に触発されたものだが、こちらも物語の構成の面白さが伝わる。

分かる人は分かる、分からない人は分からないという印象を持つが、人によって関心の有無が分かれるのは当たり前なので、難しければ無理に読む必要はないと私は考える。

さて、1983年の大韓航空機撃墜事件は、世界中の人々を震撼させたが、日本でもぞっとする事件が1984年に起きた。

グリコ・森永事件である。

容疑者はキツネ目の男だと騒がれながら、とうとう2000年に時効を迎え、未解決事件となった。

事件はまず、江崎グリコの社長が拉致されたことに端を発し、身代金要求をしたかと思えば受け取りの現場には現れず、その後どうなったかと思えば、森永製菓など他の食品メーカーが脅迫されて、毒入り菓子がバラまかれるといった状況だった。

マスコミや警察に挑戦状を送りつけており、『怪人二十面相』ならぬ「かい人二十一面相」を名乗り、こんな事件に江戸川乱歩の小説のキャラクターを持ち出すのかとびっくりした記憶がある。

そんな物騒な世の中で、当時の中曽根康弘総理大臣は、臨時教育審議会を設置し、有識者によって「二十一世紀を展望した教育のあり方」が議論された。

1990年に10才(=小学4年生)を迎える子どもを基準に考えると、まさに21世紀には二十歳を過ぎて社会人になるわけだから、これからの日本にどういった人材が必要になるか、どのような教育改革が求められるかが問われたのである。

実は、その教育改革の影響を直に受けたのが、今の40代であることに気づいた人はいるだろうか。

バブル崩壊後の不況の影響も無視できないとはいえ、今の40代が学校教育で身につけたものは、社会に還元されているだろうか。

AIの時代を牽引する人材の育成がますます求められる現代において、今聞こえてくるのは、教員の待遇改善の話題がほとんどだが、大丈夫だろうか。




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