20世紀の歴史と文学(1901年)
今から123年前の1901年、20世紀の始まりとともに、あの昭和天皇がお生まれになった。
今では「昭和の日」として祝日になっている4月29日のことである。
祖父は、当時の明治天皇であり49才、父親は後に大正天皇として即位するのだが、このとき22才だった。
昭和天皇がお生まれになった年は、日本の製鉄・製鋼業が大きく発展するきっかけとなった官営八幡製鉄所が、操業を開始した年でもある。
今や日本の製鉄技術は、世界トップレベルを誇り、私たちの生活でも鉄鋼製品はなくてはならないものである。
一方で、製鉄業界は、脱炭素化に向けて、これまでの製造技術の大転換を迫られ、1世紀が経った今、水素還元製法を導入している。
この製法のイメージが難しい人のために、以下に解説しよう。
学校で習う理科の知識が少しあれば大丈夫である。
そもそも、鉄の原料は鉄鉱石であり、鉄鉱石がないと鉄はつくれない。また、鉄鉱石だけでなく、石炭も必要である。
鉄鉱石は鉱山から、石炭は炭鉱から採掘する。昔は、九州の北部が国内最大の炭鉱地帯だったことから、利便性もあってそこに官営の製鉄所が建てられたのである。
石炭は、1300度以上の高温で蒸焼きされ、その結果コークスができる。そのコークスと石灰石を混ぜて製鉄作業を行うのだが、ここで化学の知識の確認である。
空気中の酸素と鉄が結合すると、酸化鉄ができるが、鉄鉱石というのは、もともと鉄と酸素が結びついたものである。
そこに、石炭に含まれている炭素が混入するとどうなるか。炭素が鉄鉱石に含まれている酸素と結びついて、二酸化炭素(C+O2=CO2)ができるのである。
1トンの鉄をつくると、2トンのCO2が発生するといわれているので、いつまでも近代的な製法から脱却できずにいるのはダメだということで、脱炭素化に向けて、水素還元製法が取られるようになっている。
ご存じのとおり、水素は、酸素と結びついたら水になる。二酸化炭素は発生しない。この水素還元製法により、CO2削減が10%ほど可能だとされているのである。
さて、1901年当時の日本に戻ろう。
20世紀の幕開けと同時に、日本が国家事業として製鉄業に力を入れたのは、軍備拡張の一環でもあった。
1895年に日清戦争に勝利した日本は、清(=今の中国)から賠償金を勝ち取り、その賠償金をもとに官営八幡製鉄所を建てたのである。
1901年は、くしくも、日本の未来に先見の明を持っていた福沢諭吉が亡くなった年でもある。
彼は、「鉄は文明開化の塊なり。」という名言を残したのである。
今日から、1話1年単位で、20世紀の歴史と文学シリーズがスタートする。
1901年に発表された与謝野晶子の『みだれ髪』も、女性の恋愛感情を詠んだ歌集として大きな反響があった。
時代背景を読み解き、文学にも触れていくシリーズを、1ヶ月に10年ペースで2000年まで続けていくので、11月までお楽しみください。