法の下に生きる人間〈第55日〉
この1週間、食品ロス削減推進法の条文をもとに、この法律と私たちの日常生活がどのように関わっているかを見てきた。
今日は、最後のまとめとして、食べ残し以外の問題にも目を向けよう。
第19条の条文に、こんなことが書かれている。
(未利用食品等を提供するための活動の支援等) 【第十九条】
国及び地方公共団体は、食品関連事業者その他の者から未利用食品等まだ食べることができる食品の提供を受けて貧困、災害等により必要な食べ物を十分に入手することができない者にこれを提供するための活動が円滑に行われるよう、当該活動に係る関係者相互の連携の強化等を図るために必要な施策を講ずるものとする。
以上である。
これは、いわゆる「フードバンク」のことであり、NPO法人などの活動がよくニュースで取り上げられているのを知っている人もいるだろう。
食べ残しではなく、まだ賞味期限まで長く保管できるレトルト食品などの回収や寄贈活動を行っている。
もう一つ、「フードドライブ」という言葉もあるのをご存じだろうか。
家庭で眠っている食べ物を持ち寄り、フードバンクを通じて地域の福祉団体や施設などに寄贈する活動が、「フードドライブ」である。
孤児や生活保護受給を受けている生活困窮者にも届けられているわけであり、全国各地から集まった食品を届けることによって、食べる喜びや社会とのつながり、安心を生み出していくのが、「フードバンク」の役割である。
これは、SDGs〈持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)〉の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」という理念に通じるものである。
今は、ウクライナだけでなく、ガザ地区の住民も十分な食料に恵まれず苦しんでいる。
日本国内のみならず、こういった国や地域へも、国連を通じて私たちは積極的に支援活動に関わっていく必要がある。
何も直接的な支援ができなくても、食べ残しをしないことや、無目的に衝動買いをしないことなどによって、ふだんの生活の中での小さな積み重ねが、間接的な支援となりうる。
暮らしが良くならないといっても、それでも私たちは先進国に生きる国民の一人である。
発展途上国の人々から見れば、裕福な暮らしに見えるわけである。
ただ、近年は、日本においても集中豪雨等によって住む家がなくなったり、農家で生計を立てている人はあっという間に農作物がダメになって大損害を受けたりすることが珍しくなくなった。
こういった緊急事態に備えて、国や自治体は、食品関連事業者から未利用食品を優先的に買い取ることも今後必要になるだろう。