法の下に生きる人間〈第21日〉
私たちの生活に身近な「税金」について、ほとんどはマイナスイメージで語られることが多いのに、どういうわけか、ある「納税行為」については多くの人に支持されている現状がある。
そう、いわゆる「ふるさと納税」である。
ふるさと納税は、制度として創設されたのが、もう15年前のことであり、今もまだ返礼品目当てに「ふるさと納税」を活用している方は少なくないだろう。
この「ふるさと納税」制度の創設は、2008年の地方税法の改正によって実現したわけだが、当初危惧されていたことが今や現実になり、大都市の自治体は税収が大きく減少し、頭を悩ませている。
今は亡き元都知事の石原慎太郎は、「何をもって『ふるさと』とするかは法律で決められない。住民税で支払うのは税体系としておかしい。」と、法改正の1年前に批判していた。
それは一理あると、私も思う。
もともと寄付金としての位置づけであり、他自治体に住民票を置く「納税者」から寄付を受けた自治体は返礼品を送るのだが、そもそも返礼品の送付は法律で定められていることではなく、当該自治体が「お礼」として送っているにすぎない。
それがいつの間にか、いくつもの自治体が返礼品PR競争に加わり出したものだから、「納税者」サイドも意識がガラッと変わり、当初は純粋に自分の故郷を思って支援する意味での「納税行為」が、いつしか大量当選の豪華懸賞に応募するような感覚になってしまったのである。
その結果、これまで注目されることがなかった小さな町や村が一躍有名になり、税収が桁違いにアップする事態が起きた。
それを知って、ますます自治体同士のPR競争が過熱し、とうとう総務省が口を出さざるを得なくなったのは、多くの人がご存じだろう。
ちなみに、「ふるさと納税」制度の所管は総務省であるが、創設されたのは、元総理の菅義偉が総務相を務めていた時期である。
地方創生の一環として、第一次安倍内閣が実現させたものだが、提唱者は菅義偉だとされている。
さて、東京ではすでに世田谷区の財政が危機的状況だと言われている。
世田谷区は、東京23区の中で人口はトップであり、区の面積も羽田空港のある大田区に次ぐ2位である。
そんな自治体が、税収減で窮地に陥っているのである。
私たちにとって、「ふるさと納税」とは何なのか、今週は「地方税法」をもとに1週間、考えてみることにしよう。