法の下に生きる人間〈第87日〉
2年前(2022年)の4月1日に、民法731条が改正されるまでは、昭和22年から75年間も、「男は、18歳に、女は、16歳にならなければ、婚姻をすることができない」 と定められていた。
改正後、現在は、「婚姻は、18歳にならなければ、することができない」という文言に変わっている。
女性の年齢が引き上げられたのだと思うが、よく見ると、性別の表記もなくなっている。
だが、だからといって、性別を問わないという解釈ができるわけではない。今回の改正で男女とも同年齢になったから、あえて「男女とも」などの文言を入れる必要はないという考えに立って作られた条文である。
その趣旨は、法務省のホームページを見れば分かるだろう。
近年、同性婚が認められる風潮が広がりつつあるが、現行の民法の規定は、まだ「夫婦」という言葉が至るところに見受けられるし、「女」という言葉も条文の中で使われている。
なぜ、この部分は表現の変更が検討されないのか。
それは、国の最高法規である日本国憲法が、1947年の施行後75年以上が経っても未だに改正されていないからである。
日本国憲法の第24条では、婚姻について次のように定めている。
【第二十四条】
婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
以上である。
この憲法の規定については、平成30年に実際に国会で質問が出され、当時、政府の見解として次のような答弁があった。
憲法第二十四条第一項は、当事者双方の性別が同一である婚姻(以下「同性婚」という。)の成立を認めることは想定されていない。 いずれにしても、同性婚を認めるべきか否かは、我が国の家族の在り方の根幹に関わる問題であり、極めて慎重な検討を要するものと考えており、「同性婚に必要な法制度の整備を行わないことは不作為ではないか」との御指摘は当たらない。 (中略)民法や戸籍法において、「夫婦」とは、婚姻の当事者である男である夫及び女である妻を意味しており、同性婚は認められておらず、同性婚をしようとする者の婚姻の届出を受理することはできない。
以上であるが、この1年後の2019年に、全国各地の主要都市の地裁で同性婚訴訟が起きた。
その結果、ほとんどの地裁で、「同性婚を認めないのは違憲だ」とする判断が出されたのである。
また、2021年3月には、札幌地裁が「同性婚を認めない民法などの規定は憲法違反だ」と判断した。
さて、さらに2年後の2023年2月の衆議院予算委員会で、岸田総理は、同性婚の法制化について「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題」と答弁した。
2024年は、どうなるだろうか。