突先9. 姫妃(キヒ) < Ⅰ >
さっき家の下の階でお金の計算などをしていたら、窓の奥の木の葉の隙間から、熟れた柿のようにオレンジの夕日が、ぐっとこっちを見ていた。
ちょっとアラビアを思い出すような、感じ入るものがあったのでラララ用に写真を撮っていたりしたら”それ”はちょっとした角度の問題でみるみるオレンジの光を失っていった。そのときに気づく、これはナギサ。
「ハララ妃!」
携帯を置いて思わずベランダに飛び出したけれどすでに太陽は日没の最中、先ほどのように「見られている」ようなオレンジには再び会えなかった。