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自由詩

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2024年8月の記事一覧

雷鳴

雷鳴のとどろく草原を歩いている一匹の獣のような目。その目だけがあり、雷鳴を聞いたことはなく、それは草原ではない。

木立の間を細い尻尾が揺れ、あなたはむかし見た振り子時計を思い出す。しかし、そのような記憶などなく、木立の間にはあなたが立っているだけだ。

てのひらでゆっくりと回り始めた方位磁針があり、誰もがそれを止める術を知っている。ただ誰一人として止めようとせず、止める方法も分からない。

振り

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平熱

旅をしていたことがあったと思う
生乾きのサバンナ
を遊泳している裸眼で
禁足地をあらう雨
をはるかに見やる
花見へ急ぐ
ひとびとを抜ける
ときに感ずる身熱の橋を
わたり奥歯のひかりとする
ひとびとに告げて回る
ここより先は、ここより先は
陸橋の崩れる音がして
わたしたちの平熱を
かえしてほしい

すずな
すずしろ
三月のままで
ねむることができないのは
わたしたちのうつくしい怠慢
あるいは密約

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