聞く?聴く?

なかなか本を読む時間をとらないので1冊を読み終えるのにかなり時間がかかってしまうという話を、もう通算何度目かしている気がしますが、久しぶりに1冊読み終えましたので薄口読書感想文をお送りしたいと思います。

今回読んだ本は、もう結構多くの人が読んでるんじゃないかなと思いますが、ケイト・マーフィ著の「LISTEN」です。

手にとった時、自覚があったか分かりませんが読み終えた今になって考えると僕は話を聞いてもらいたい人なんだなと思います。
そして周りを見渡しても、そんな人が多くいて言いたいことを全部言えなかったりすることが、なんだか悲しくもあり腹立たしくもあるなと感じています。
つまり逆の立場になって考えてみると、僕自身もこういう思いを相手にさせてしまっていたんだろうと思い反省したしだいです。

さて内容に入って行きたいと思いますが、聞くことが大切だという話は色んな所で色んな人が色んな表現方法でしていると思いますが、今回の本の印象は僕の中ではこれまで聞いてきた聞くことの大切さに関する話よりももう1歩も2歩も深堀された内容だなと感じました。

本の序盤で、「あなたが最後に、誰かの話に耳を傾けたのはいつだったか、覚えていますか?次に何を言おうかと考えたり、ちらりと携帯電話を見やったり、相手の話をさえぎって自分の考えを話し始めたりせず本気で聴いたのは?」と問われたとき、正直自分の中で答えがでませんでした。
ここ数年は割と話を聞くことを大切にしようと心がけているつもりでしたが、冷静に振り返ってみると大切な人との話の最中も、なにか相手に良いことを話したいとか、LINEの通知が気になったりとか全身全霊で話を聞いていることがあるのだろうかと。

本の中では、”聴く”ということに関して、いろんな場面で、いろんな角度で説明がされていて、いきなり取り入れるには少しハードルが高いなと感じるものもありましたが、これならできそうだと感じる”聴き方”もあり、できることから少しずつ自分の生活に取り入れていきたいなと思いました。

一つ僕的に取り入れやすいかなと思ったものを紹介すると、話を聞くときに「自分が間違ってるかもしれないという前提にたち、その証拠を探すような姿勢で話を聞く」というものがあります。
この姿勢は個人的には今の時代大切なんじゃないかなと感じました。
SNSとかを見ていると自分の信じるものだけが正解だと言わんばかりに他の意見に反論している人がいますが、算数の解じゃないんだから正解がいくつもあっていいんじゃないかなと思ったりします。
まだSNSの中だけの話ならいいんですが、これが身近な人との会話の中で繰り広げられたとき、あまり良い方向に向かわないような気がします。

チームワークに関する話では、「生産性の高いチームは、全員の発言量が同じくらい」とありました。前職のとき不毛な会議をたくさん経験しましたが、振り返ってみると会議の長や主要なメンバーばかりが話をして参加しているメンバーの大半が話を聞いているだけだったなと気づき、この本をもっと早く読んでいたら、少しは良い会議になっていたのかもと思いました。

「ずらす対応」と「受けとめる対応」の話はとても、しっくりきましたし、猛省した内容でした。会話の内容をじっくり聞いていると気づくんですが、話し手が話した内容が聞き手に届くと、そこから話が変わって次の内容に移ってしまい話したいテーマが全然深堀できないなんてことがよくあります。
トークが上手な芸人さんとかならそんなことも無いんでしょうが、言いたい事が全部言えないまま話が進んでいったりすると、フラストレーションが溜まりますよね。

きちんと話を聞いてくれない人は単に嫌な人の場合もありますが、本当に嫌な人であることはあまりないのではないかと、著者のケイト・マーフィさんは言います。
こういった人の会話は自己中心的ですがそれは嫌な人だからというより、根深い自信のなさや、不安、弱みのあらわれであることが多いのだと。
そう考えると少し話す側も心にゆとりが持てますし、しっかり”聴く”ことで彼らも話を”聴く”ようになるかもしれないですね。

最後にもう1点、個人的に反省した点を挙げると「丁寧に聞きすぎたら、不安や恐れから自分の殻の中に引きこもったり、互いの言葉をさえぎって話したり、携帯電話に手が伸びたりしてしまうのです。
テクノロジーは聞くことなど不要なのではないかと思わせ、聞くことを邪魔してしまいます。デバイスは、人と親密になることを恐れる私たちを、甘やかしています。たとえせつなきほどに孤独なときでさえも、社会とつながっていると勘違いさせるのです。」
本の後半、自分が耳を塞ぎがちだと感じ始めている時にこの内容はとても刺さりましたし、今後少しずつでも改善していきたいなと思いました。

ただ、本の中でも触れられていますが、人の聴くことのキャパシティーみたいなものがあるそうで、生活している間ずっとしっかりと聞き続けることはとても大変なことですので、まずはここぞというときにしっかり聴く努力をしたらいいのかなと思います。

本の後半は正直刺さりすぎてどこを紹介すればいいのかわからないくらいでしたが、紹介した部分以外にも、参考になる部分は沢山ありましたし、僕が自分のことを振り返りながら読んで、感じた内容を紹介していますので、皆さんが読んで大切だと思うところはまた違ったところにあるのかなとも思います。
聞くことはだれにでもできるけど、本当に聴いているのかと問われるとどうなんだろうと思ってしまう。冒頭のあの質問にある意味この本の本質的なものが凝縮されているのかなと感じました。


なんだかいつもより少し長くなってしまった気がしますが、長文にお付き合いいただきありがとうございます。
それではこの辺で失礼いたします。

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