良い人悪い人って?
2019年、ラグビーW杯が日本で開催されました。
僕は受験前で毎日の長時間勉強の合間を縫って大阪、神戸で開催された4試合を観に行きました。
ラグビー経験者にとっては夢のような時間で、外国の方がスタジアムいっぱいに座って一緒に観戦しているあの空間は、これまでに感じたことのない異国にいるような不思議な感覚をもたらしてくれました。
ラグビーW杯でさえあのような素晴らしい空間を創り出せるのなら、コロナ禍の影響を受けない東京オリンピックはどれほど素晴らしい大会になったのかということを考えてしまいます。
あのときのあの場所の雰囲気は本当に異様で、何故か忘れてはいけないような気がしたのを覚えています。
そしてスポーツの大きな大会の開催意義のようなものを感じた大切な経験もすることができたと思っています。
このW杯の話はまた後日書くとして
実は本題はそこではありません。
このW杯の試合観戦後、自宅の最寄駅に着くと外国人の家族が乗るべき電車のホームに迷っていました。
この駅の周辺地区にはホテルがいくつかあり、そのうちのどこかに泊まっているのだろうなということはなんとなく分かりました。
僕は慣れない英語で彼らに「どの駅に行きたいの?」と聞き、そのホームまで案内しました。
僕は家路についている最中に数分前のこの出来事を思い返してまた不思議な感覚になったのを覚えています。
いくら試合観戦後で高揚感が抜けていないとはいえ、見ず知らずの外国人に自ら声をかけて道案内をするとは、、、
僕の記憶の中では道案内をしたのは思い出せる範囲で人生で一回。その一回も道を尋ねられたから応えただけでした。
加えて人見知りな性格なので、自ら名乗り出て人助けをしようというタイプではないはずなのです。
自分の新たな一面と言えば大袈裟ですが、ジョハリの窓でいうところの「未知の窓」というか、自分でも知らない自分がいることを感じる一件でした。
最近ニュースを見ていてふと考えるのですが、世間って良い人悪い人を区別しようとしすぎてやしないですか??
よく言われることですが、凶悪な殺人犯にも親友はいるはずなんです。(犯罪を正当化するつもりはありません)
こんなやつ誰が仲良くするんだよって思うくらい性格が悪い人にも、事故にあえば心配して駆けつけてくれる友人がいるはずです。
はたまた
八方美人で誰とでも仲良くできる素晴らしい人格者でも敵は必ずいるのです。
僕の前では良いところばっかり見せてくれる最高の友人でもときには憎まれることもあるのでしょう。
ならばその人のほんのわずかな一面だけを取り上げて良い悪いの分別をするのはいささか傲慢ではないでしょうか。
話が少しだけ脱線します。
幼児教育の学問分野では僕もあまり聞いたことのない、ある考え方がなされているようです。
「5領域」という考え方です。
保育所保育指針というものに載っているらしく
「子どもが現在を最も良く生き、望ましい未来を作り出す力の基礎を培う」
という保育の原理に基づき、この5つの領域を意識して保育を実施することで子どもの総合的な心身の発達を促すことができるというものとされています。
具体的にいうと健康、人間関係、環境、言葉、表現の5つの要素で構成されています。
僕はこの考え方にとても感激しました。
例えばお昼寝の時間に部屋を抜け出して砂場で泥まみれになりながら友達とはしゃいでいる子どもと、保育園内で大人しく静かに寝ている子どもがいるとします。
一見、泥まみれの子どもは決まりを守れない「悪い子」だと我々は思いがちです。
しかしこの5領域の考え方を使うとどうなるか。
健康や人間関係の要素でこの子を見れば正しい成長をしており、むしろ「良い子」だといえます。
そして静かに寝ている子どもも同じく、身近な環境との関わりという点において正しく育っている「良い子」です。
この例を見れば分かると思いますが、5つの領域で子どもを見れば100%悪い子なんてそうそういないのです。
自分でも知らなかった自分がいることもあるし、嫌いだと思ってたあいつの良いところが見えることもあるし、素敵なあの人に関する悪口を聞いちゃうこともあるはずです。
幼児ですら多様な5つの領域で見られ、成長へと導かれる時代です。大人の我々はもっと多くの領域で、その人がやったことではなく、その人自身を多面的に見て評価していく時代なのではないでしょうか。
誰のどんなときの言葉だったかは忘れましたが、こんな名言があります。僕は好きです。
「人間はいつだって誰かにとってはいいやつで誰かにとってはわるいやつです。」
地球上に76億もの人がいる現代で、その全員と合うような人はいないのです。
なので全員と友達になれるようにとは思いませんが、せめて嫌な人や合わない人に出会ってもその人を悪く言うんじゃなくて
この人に合った付き合い方って自分の中にないかな、と考えたり
この人はどの領域で見れば素晴らしく、魅力のある人になるんだろう、と考えたり
この人の良さを引き出す付き合い方ってなんだろうって模索したりしてみませんか。
そしたら人間関係って、人生ってもっと楽しくて豊かなものになると思うんです。