神戸異人館模様~いにしえのドレス
30年前程前、どこかの異人館で、お姫様のようなドレスを着て写真撮影をしたことがある。
ドレスは6種類くらいあっただろうか、ひとつ選んで服の上から着る、というより被る。ケープのようになっていて、袖を通して後ろをマジックテープで留めるだけ。
オサレな椅子に座るとカメラマンが撮影してくれ、出来上がりを数百円だか払って買い取る。だいたいそんな流れだったと思う。
今回、北野外国人倶楽部の受付に、ドレス撮影の案内を見つけて、写真の存在を思い出した。
それはともかく中に入ると、早速目を引いたのは真っ赤な薔薇の絨毯。これが横浜中華街あたりだったら怪しい占い師が水晶を覗き込んでいそうだけれど、神戸異人館だと品良くまとまって見えるのはなぜだろう。
館内にはドレスを着たマネキン(首なし)がたくさん。若い日の撮影風景が懐かしく甦る。でもさすがにこの歳になってふりふりドレスを着る勇気はない。
ゴージャスなベッドに煌びやかなディナーテーブルはそもそも縁がない。
どれもただ見て楽しむだけ。
そういえばあの時の写真はどうしたっけ。家中ひっくり返せばみつかるかもしれないけれど、久しく見ていない。
ドレスを着てはしゃいだ、遠いあの日は、異人たちの溜め息のように、儚く静かに消えていった。