通りすがりの街~マレーシア・クアラルンプール
コタキナバルと同様、一泊以上したことはない。マレーシアの首都・クアラルンプール。
アメリカばかり旅行していた私が初めて降り立った、日本以外のアジアの地である。ちょうど25年前のことだ。
以来、東南アジアにずっぽりとはまってしまい、マレーシアにはこれまで20回ほど訪れている。
それなのに、首都であるクアラルンプールはろくに観光していない。いつもマレーシア国内やモルディブ等のビーチリゾートへ行くためのトランジットで数時間を過ごすだけだった。
その限られた時間で何をするか。
チャイナタウンの活気に触れるのもよし、ペトロナスツインタワーを眺めながらカクテルを啜るもよし、インド人街で布を探すのもよし。
市内は交通網が発達しているからどこへでも簡単にアクセスできるし、どの街も個性的で退屈しない。
私の場合はいつも飲んで食べて寝るだけ。安くて美味しい中華やスチームボートを食べ、バーで飲んでホテルに帰って眠る。
バトゥ洞窟もピンクモスクも世界遺産マラッカにも行ったことはない。
一度くらいクアラルンプールとその近郊だけを満喫する旅をしてみようかな、と考えなくもない。
でも、その先にあるものを求めてしまう。
楽園はいつも、クアラルンプールをステップにしてたどり着いた場所にあった。
そして、おまけのような時間だからこそ、ぎゅっと凝縮された楽しみがある。
往路でのトランジットだったら、翌日目にするであろう美しい海に思いを馳せ、復路であれば休暇の余韻に浸る。
そんな中、ビルだらけの街に吹く風を感じ、飲むお酒は最高だ。
クアラルンプールで過ごす時間は、料理をより美味しくするスパイスのようなもの。
至福のスパイス、次はいつ味わえるのだろう。