べっこう飴とウナギ釣り
夏といえば祭り。
祭りといえば縁日。
縁日といえば……その先は人それぞれ思い入れのあるお店や食べ物があるだろう。
私が生まれ育った街のお祭りで、ダントツの人気No.1は、べっこう飴の屋台だった。
一般的には溶けた飴を動物や乗り物の型に入れ、固めたものを売っているけれど、私たちが見ていたのは、まさに芸術といっていい職人技だった。
屋台のおじさんが、黄金色に輝く溶かし飴を鉄板に注ぐと、次から次へと子供たちのリクエストの声が飛ぶ。
ヘラとお箸のような棒を使い、おじさんは、まるで絵を描くように飴で形を作っていく。
かぶと虫だったりウサギだったり、時には龍といった無茶ぶりのリクエストにも応えていた。
べっこう飴の屋台はいつも、たくさんの子供たちに取り囲まれていた。
皆、べっこう飴を食べたいというよりも、おじさんの手で、自分だけの飴が作られていく過程を見るのが楽しかったのだ。
大人になってから久しぶりに故郷のお祭りを覗いてみると、べっこう飴はごく普通の型に流し込んで作られたものしか売られていなかった。
縁日といえばもう一つ思い出すのはウナギ釣り。
え、なにそれ!?
って思うでしょう?
でも本当にあったんです。
金魚すくいと同じような縦長の、浅いプールにウナギが泳いでいて、それを小さな釣竿で、エラに引っ掻けて釣り上げるんである。
一回500円だったか700円だったか。
半世紀近く前の縁日にしてはえげつない値段で、もちろん子供たちは手が出せない。ほとんど大人が遊んでいたと思う。
上京して色んな地方の人と知り合ったけれど、縁日のウナギ釣りのことは、誰も信じてくれなかった。
ひょっとして私の記憶違いかと、同窓生のLINEグループに問いかけてみたら、一人、覚えている友人がいた。彼女が言うには、鯉釣りもあったそうな。そちらは全く記憶にない。
子供時代の夏祭りには、それぞれの忘れ難い思い出が附随している。
今日は丑の日。
懐かしい夏の日に想いを馳せながら、スーパーで買ったウナギを食べよう。