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『ロード・オブ・ザ・リング』映画感想

スペシャルエクステンデッドエディション

何度目かの視聴になりますが、今回は30分程の追加シーンのあるエクステンデッドエディション版で視聴しました。
通常版と比較すると、やはり追加シーンがあるとないのとでは、世界観への没入感が違ってきます。
感想についてはネタバレありということで、視聴済みの方を対象としています。

導入~ホビットの村(シャイア)

まず、導入からして引き込まれます。
世界に存在する指輪と、全てを支配する力の指輪、これらの解説とそれを巡る戦いについてのシーンが非常に熱い。
(このナレーション、何となく声がガラドリエル役のケイト・ブランシェットに思えるけど違うかなぁ)
闇の王サウロンの造形が、若干小者感というか、そこまで絶対的には見えない感じはしましたが。恐らく、指輪の力によって物理的なものだけでなく魔力的な脅威度が非常に大きいのでしょう。(プレッシャーで心の弱い者は潰されるとか)

ホビットの村のイメージは非常に美しく、ホビットたちの素朴かつ純朴な暮らしぶりが微笑ましい。
ガンダルフが馬車から花火をおまけ的に放つところで、子供たちが喜ぶシーンが凄く好きです。

この辺りでビルボが持つ指輪の危険性がわかってくるわけですが、小さな指輪のじわじわと忍び寄るような陰湿さと強大さとを重々しく描いています。

~エルロンドの館(裂け谷)

サウロンの追手、黒の乗り手(ナズグル)から逃げるシーン。
ここは非常に好きで、特にエルフのアルウェンがフロドを馬に乗せて逃げるシーンが素晴らしいと思います。
途中、森の中を走り抜ける際に木の枝で顔を傷つけるシーンがありますが、あのわずかの描写で彼女の決意が伝わってきます。
あの一瞬は天才的な描写だと思います。(原作にあるのだろうか?)

エルロンドの館での好きなシーンとしては、やはり会議の場面でしょう。
エルフ、ドワーフ、人間、ホビットと集まり、今後の会議をするわけですが、これがまとまりません。
特にドワーフのギムリがエルフに対し全面的に噛みついていくところは、その後を考えると凄く面白いシーンです。
エルフとドワーフは基本的に仲が悪いという設定は、これが元なんでしょうかね?

私はシリーズ全体を通してギムリは凄く好きなんですが、会議で指輪を破壊すると決まった瞬間に斧を振り下ろす単純さというか純粋さが特に好きですね。
ビルボがフロドの持つ指輪を一瞬奪おうとするところなんかも、指輪の魔力がいかに執拗かつ心を蝕む毒であるかがわかるシーンでした。あの指輪は不老と絶大な力を与える代償として、内面から魅入られてしまうのでしょう。

~モリアの坑道

この辺りは作中屈指の名場面が多いです。
モリア坑道の造形が壮大で、途中語られる話(設定)だけで世界の拡がりというか、空間の広大さが伝わってくるようでした。
また、「ミスリル」についての話で、フロドの着ていた鎖帷子(くさりかたびら)は凄まじく貴重な品で、シャイア(ホビット庄)全土より価値があるというのは驚きました。凄い価値だ・・・。

今回、このモリア坑道の中で、特に感動したシーンがあります。(今までの視聴では感じられなかった)
ガンダルフが道に迷っているときにフロドに語った言葉です。
「死に値する者が生き永らえ、生きていて欲しい者が死ぬ」
「賢者といえども未来は読み切れない」
「軽率に死の判定を下してはならぬ」

つまり、どんなに小さな命であっても、その後もしかしたら大勢の運命を変えることになるかもしれない。
まさに賢者と言える認識だと思う言葉です。

また、フロドが指輪を持ったばかりにと悔やんでいるときに
「辛い目に遭うと誰もがそう思うが、思ったところで今更変えられない」
「それより、今自分が何をすべきか(できるか)考えることだ」

この言葉は今回の視聴で特に心に響きました。
偉大な師の存在は何よりも代え難いと感じます。
思えば、現代では内面的な師と呼べる者が少ないのではないでしょうか。
ただし、技術の発達によって先人の知識や知恵を得る機会は増えました。
我々は、現実の聡明な師を得る代わりに、そういった過去の記録から得たもので成長しているところが多分にあると思います。
特に性格タイプがINFPの場合、創作物から本質を見出し、それを糧にして成長している部分が多いです。現実の師がいない代わりに、このような映画や小説の登場人物の言葉を通して学ぶ機会となっているのかもしれません。

少々脱線してしまいましたが戻ります。
ドワーフの王の墓の前で戦闘となります。
ここは今作屈指の戦闘シーンで、トロルという大型生物も登場。
かなりハラハラさせられました。
トロルは獰猛かつ怪力であり、知性は弱そうですが、生命力的にやっかいな相手です。
特に、鎖を使った振り回し攻撃は見ていて怖すぎました。
(あれは食らったら体が裂ける・・・)
正直、レゴラスの弓矢が強すぎて、彼がいなければやられていたのでは?と思うレベルの強敵でしたね。
レゴラスが放つ首の後ろや喉の急所への攻撃は相当効果的だったでしょう。
また、ミスリルの鎖帷子の強靭さも描かれていて、非常に面白いシーンでした。さすがシャイア全土より価値のある品!

次のシーンで登場する古の悪鬼「バルログ」。
これは、初視聴の際(劇場でしたが)造形にかなり衝撃を受けた覚えがあります。
洋ゲーまたはファイナルファンタジー辺りのイフリートレベルの化け物が出てきたな!と。(化け物と片付けられない知性があるのかもしれませんが)
また、広大な宮殿跡の通路に炎による光の反射が次第にこちらに近付いて来る演出は素晴らしいと思いました。
非常に重々しく、プレッシャーを感じさせるものでした。まさにとんでもないものが奥に潜んでいるなという感じです。
次第に光が大きくなっていくにつれ、恐怖感が増していくのがわかります。

この坑道、抜けるまでに4日かかると言われ、ガンダルフが悩んでいる辺りで恐らく数日が経過しているため、かなり広大なことがわかります。
個人的には、ゲーム『テイルズオブファンタジア』の中で、隠しダンジョン的に出てきたモーリア坑道が凄まじく長く過酷だったため、ある程度実感としてわかっていますw
また、洋ゲーですがドワーフ達がモリア坑道を復興?するタイプのゲームが発売されるようで、なかなか面白そうだなと思っています。(深く開拓しすぎるとバルログみたいなのが出てきたりして)

~ガラドリエル様の森

ついにここを書く時がきました。
正直、このロードオブザリング1作目で一番好きなのはこのガラドリエル様の場面でした。
エルフの隠れ森的な美しい宮殿に住んでいますが、かなり妖艶というか怖さを秘めた印象です。
実際、謁見した際に旅の仲間たちに眼を合わせ、何かしら意志力を試している様子でした。(ボロミアはかなり気圧されていた)
女優のケイト・ブランシェットさんが素晴らしいです。(私はこの作品で彼女のファンとなりましたw)

水鏡の前で、フロドが指輪をガラドリエルに渡そうとし、彼女はそれを受取ろうとします。このシーンがかなり怖い。
心の底で眠っていた野心が膨れ上がり、もし指輪の力を得た場合、サウロンとまではいかないまでも非常に強大な存在となり得ただろうことが伝わってきます。
(このシーンの日本語吹き替えも聞きましたが、軽すぎて酷いと思う。一人称が「わらわ」というのもどうなのか・・・イメージが崩れてしまう)

とにかく、その恐ろしい変貌のシーンから、すっと普段の姿に戻ります。
そして、「試練に打ち勝った」と呟き、エルフの国であるヴァリノールに”ガラドリエルのままで”戻ると伝えます。
このシーン、かなり短時間で終わるため、よくわかりませんでしたが、非常に激しい内面での戦いが巻き起こっています。
ガラドリエル程のエルフにとって、指輪の力がどれ程強大で、自身の内なる欲望、野望を成就させるに足るか言うまでもないでしょう。
ガンダルフですら恐れて受け取ることを拒絶した力の指輪。
強い力を持つ者ほど、指輪による恩恵も強大となるのではないでしょうか。
それ程の誘惑を、ガラドリエルは指輪を手にしようとする欲望から立て直し、拒絶することができた。
最初から拒絶できている者より、よほど凄いことだと私は感じました。
だから、このふっと通常のガラドリエルに戻るシーンで感動してしまいました。あの一瞬でいかに凄いことが起こっていたのかと。

優しい表情になったガラドリエル様は、旅の仲間たちにそれぞれ道具や装備を託していきます。
ここは、通常版ではなくSEE版でなければ流れないと思いますが、このシーンだけで価値があるのです。
特筆すべきはギムリとガラドリエル様のシーン。
ギムリは、この時点で既にガラドリエル様の虜になっており(眼で誘惑されたわけではなく)心底慕っています。(面白すぎるでしょw)
あのエルロンドの館でのエルフ嫌いは何だったのかという変貌ぶりで、このシーンあってギムリというキャラが好きになりました。
そのギムリに対し、ガラドリエル様は満面の笑みで応えてくれます。
(この笑顔は本当に良い笑顔で、全てのわだかまりから解放された内面を象徴するかのようでした)
この一連のシーンは、観ていて本当に幸せな気持ちになるものでした。SEE版を未視聴の方は、是非観てみてください。

~森でオーク勢との対決

ついに終盤のシーンに入りました。
ここは、何と言ってもボロミアのシーンでしょう。
指輪の魔力に既に魅入られており、フロドを罵りながら指輪を奪おうとします。
ただ、このボロミアの葛藤、やはりゴンドールの英雄だけあって気骨を感じる面があります。(最初は小者臭がしましたが)
最初は裏切者のように思えるボロミアですが、視聴を重ねるうちにこの人間味のある弱さと、それを悔いる心の動き、最後には誇りを取り戻す姿は、非常に魅力を感じます。
エルロンドに「人間は弱い」と吐き捨てられる程に確かに心が弱い。
ただ、だからこそもがき、あがき、苦しんで何かを見出すことができるのが、人間の良さではないだろうかと。
人間は皆誰しも心に弱さを持っているはず。しかし、その弱さを認識し、悩み、葛藤し、克服することが本当の強さだと私は思います。
だから、このボロミアの最後の戦いについては、とても心を動かされます。
ボロミアは最後の最後で人間として、また祖国の英雄として誇りと尊厳を取り戻したと思えます。

エンディングテーマ

書き忘れてしまいましたが、エンヤの歌うエンディングテーマ『May It Be』とても美しいです。
初視聴時、このエンディングテーマを聴いてしばらく放心していたように思います。
歌詞としても、恐らくエルフ語が入っているのと、エルフチックな声色もあってとても幻想的で神秘的でした。
境遇を歌った歌詞のようでいて、心の迷いや葛藤について歌っているように思えます。
作中の登場人物の心の内を表し、生きとし生ける者の指針を示しているようでもあり、とても感慨深い楽曲だと思います。

最後に

ここまで長かったですが、ようやく一通り感想を書き終えたといった感じです。
SEE版は3時間30分あるので、ほぼ映画2作品分くらいありますね。
今回は1作目の感想でしたが、2作目、3作目、ホビットシリーズ、アマプラのドラマ版、小説版など、まだ楽しみが待ち構えています。
それぞれ、視聴した際に感想を書いていこうと思います。

この作品、登場人物が多く、それぞれに魅力があります。
その理由として、各人物に「あんたが一番強いよ!」と言いたくなるシーンが用意されているんですよね。
強さというのは武術的な強さのみならず、心や意思の強さ、葛藤からの克服、様々な側面で描かれているように思います。
メリー、ピピンも次作で重要な役どころになったりしていますしね。

小説版は読んだことがなく、初視聴前は何となくファンタジーものの元になった作品程度しか知識がありませんでした。
その状態で行った劇場での衝撃度といったら・・・
モリア坑道辺りで凄い作品だと認識しましたね。
また、どうもこの作品は観るときの心理状態や内面の成熟度合いで感じ方が違うように思えます。視聴ごとに新しい発見があったりします。

次は二つの塔ですが、私はシリーズで一番好きなのがこの『二つの塔』です。
また視聴後に長い感想を書いていこうと思います。(これでも端的に書いたつもりなんですが・・・)

かなりの長文になりましたが、ここまでお読みいただきありがとうございました。
(このページの挿絵は、AIアートで描画したイメージです)

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