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『イワンの馬鹿』

『イワンの馬鹿』
トルストイ著


一言で言えば、正直で純粋な主人公イワンが様々な試練に遭遇するのに、特に不遇と思うこともなく、問題を素直に解決して幸運を手に入れていく姿を描いた物語。お金や兵力を否定はしないまでも、自分の役割は何なのか。自分の役割というか、使命にしたがって、淡々と生きるという、なかなか、考えさせられる物語。

一般的には「正直者がバカを見る」と言われているもので、ある意味、そうなのだけど。

イワンは目に見える利益に対し大して魅力を感じず、どのような逆境に見舞われても決して自身の意志が揺らいだりはしない。そして、そのようなイワンに、最終的には莫大な幸運が訪れる。

聖書にサタン(悪魔)に試されるという場面は、何度もでてくる。普通に暮らしていると、知らず知らず試練にあって、当初の意気込みが、消えてしまったり、お金もそうだけど、様々な形で煩悩が、刺激されて、苦しむことは多いのだけどね。

この物語の世界観は、トルストイの理想的な世界を具体化したものということなのだなあと改めて思った。

面白いと思ったのは、「お金を作ってよ!」とか、「兵隊を出して!」って頼まれると、快く出してあげるというところ。あいつは、得してしまうとか、思わない、何とも、器の大きさが、心地よい。あらゆる道具を使うことは、悪いことではない。でもそれが、他人の不幸になるのであれば、許さない。

西洋キリスト教文明って、選民思想がベースにあって、栄えていくことは、よしとされている。見落とされる大前提は、「神様も計画のもと」ということ。勝ち逃げしたがる人は多いし、そんなに悪いことでもないのだけど、だいたい、上手く行ったときって、その先のお金の使い道が、あるときなのだよね。

私も、もっとお金や人を任される立場にはなってみたいところなのだけど、まだまだ、物欲が、まさってしまっているのだなあと反省する。

平和な日常に感謝して、日々歩み続けたいと祈る。

Brigitte Bardot - "La Madrague": ブレジッド・バルドーのこの曲は、イワンが己の信念を守り、困難を乗り越える様を表しています。

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